浮遊戦艦の中で87
正太郎が、この光景を呆然と巨大子猫の頭の上から見下ろしていると、
(見ての通りよ、ショウタロウ・ハザマ。彼らは、ここの巨大人工知能にその感覚を奪われた人々なの……。言わば、現実を直視出来ないように、その能力を狂わされてしまった人々なのよ……。だから、この局面でも、あんな訳の分からないことを平気で言って居られるの……)
またもやエナが、正太郎の頭の中に直接話し掛けてくる。
「何だと……。それじゃあ、アイツらは巨大人工知能のあやつり人形も同然じゃねえか。アイツらは、あんな馬鹿げた主張をしていることさえ気づかねえぐれえ感覚を奪われちまったってことなのか!?」
信じられぬと言った表情で言葉を返すと、
(そういうことを言うものではないわ、ショウタロウ・ハザマ。彼らは彼らなりに正当な主張をしているつもりなのよ。彼らにとって、あれが精いっぱいの主張なのよ……)
「何てこってえ!! 巨大人工知能め、そこまで汚ねえ手を使って人を操るなんてよ!!」
(つまり、そういうことだわ。敵は、人間同士……いいえ、同じ目的を持った同士でさえ、そうやって仲たがいをさせて争いごとを起こさせようとしている……)
「確かにそりゃあ、戦略家としての常套手段だが、それにしてもよ、エナ。ここまで問題の根幹が目の前にあるってのに、それをぼやかして、全く違う方向にクローズアップさせちまう巨大人工知能ってのは、どういう手を使ったんだ?」
(簡単なことよ。ただ、彼らに一つの価値観を植え付けただけ。恐怖を煽った上で、分かりやすい誰かの意図的な考えを上乗せすればそれで出来ちゃうことよ……)
「何だって!?」
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