浮遊戦艦の中で85


「だ、だけど、僕は……!!」

「イイワケ無用デス――。アナタハ、同朋ノ機体ヲ、ソノ手デ、撃チ砕キマシタ――。生存者ハ、皆無デス――」

「…………!!」

 小紋はとどめを刺された。全身の力が抜けた。

 あれだけその身を気遣ってくれた中島一尉の機体も、この中に含まれているのだろう。以前の世界を取り戻すために、同朋として肩を並べたあの中隊も、そして、同じ作戦行動を遂行するために水中から浮遊戦艦へと潜入するはずだった部隊も、皆彼女の凶弾に撃ち抜かれてしまったのだ。

 そしてこのタイミングで、

「鳴子沢リーダー……。いえ、鳴子沢小紋殿……。現状によりたった今、組織評議会は、あなたを正式に統括リーダーからの更迭を決議致しました――」

 映像無線で、作戦企画室からシュミッター元大佐からの連絡が入った。

「シュ、シュミッター元大佐!! 僕は何もやっていません!! 仲間を殺そうだなんてしていません!!」 

 小紋は通信モニターに向かって強く叫んだ。

「いえ、鳴子沢リー……いえ、鳴子沢小紋殿。残念ながら、あなたのその主張は通りません」

「なぜ!? なぜですか!? 僕はただ、あの二分の一のサムライを倒したくて……」

「二分の一のサムライ……とは? 何のことでありましょうか。こちら側からモニター越しにうかがっていた光景は、鳴子沢殿が突然に同朋組織の機体に攻撃を仕掛けたところしか……」

「何ですって……!?」

「どのようなお心変わりがあったかは存じませぬが、実に我らの不徳の致すところ……。我々は、あなたに過大な重圧をかけてしまったがための……。何と申し上げましたら良いか、その……ご乱心と言えば……」

「そ、そんな!! 僕は正常です!! 何も取り乱したりなんかしてません!! プレッシャーになんか負けてません!!」

「いえ、これは失礼……。しかし、それはこちらに帰って来てからの検査と、調査報告によって明らかになることです」

「そ、そんな馬鹿な……!! 馬鹿な事って……」






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