浮遊戦艦の中で76


 小紋は、そんな正太郎とのそのやり取りの中に、この世界の全体に巣食う何者かの存在を感じていた。

(そうか……。羽間さんは、この世界の一連の動きの中に、どこかに無理矢理なメニューを要求する人たちと戦っていたんだ……。だから、羽間さんはいつもそれに対応するために自らの内面と外面を鍛えてるんだ……。僕は、羽間さんと出会ったことによって、今までとはどこか違うを手に入れてることが出来た。だから僕はここに居られる。そうでなきゃ、僕は興味だけが先行した、何処にでも居るただの小娘でしかなかったはずだから……)

 小紋は、その時の回想に合わせ、浮遊戦艦の存在に何かが重なり合う。

 しかしその刹那、迅雷五型改の機体に強い衝撃が走った。

「ナルコザワリーダー。緊急事態デス。対象ノ浮遊戦艦ヨリ、巨大ナ人影ガ現レマシタ――」

 警告ブザーと共に、人工知能〝疾風はやてが数十キロ先の映像を拡大して小紋に知らせる。

「巨大な人影だって!? あ、あれのこと……!?」

 それは予測もつかないことであった。なんと、あの黒くて不気味な円錐の形をした浮遊物の真下に、ここからでも視認できるほどの大きさを誇る人影が海上に現れたのだ。

 その巨大な人影は、不自然にも大きな波しぶきを立てるとともに、その下半身を深々と海面下に突き入れて、のっしのっしと陸上方面へと前進させるのである。

「なにあれ!? もしかしてあの形……。猫ちゃんの次は、〝二分の一のサムライ〟なの!?」

 それは正しく、彼女が二年ほど前に雌雄を決して戦った相手。そう、二分の一のサムライの姿そのものであった。

 その漆黒に染まる西洋の甲冑かっちゅうを模した大胆なフォルム。そして、背丈以上にも伸びた重厚感あふれる両刃の大剣。それは間違いなく、以前にプレミアのついたリモート・アンドロイド〝ハザマショウタロウモデル〟の成れの果て。二分の一のサムライであることに疑いはなかった。

「そんな! あんなものまで巨大化させて!? 浮遊戦艦とアイツとはグルだったの!?」


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