浮遊戦艦の中で74


「中島一尉さん、お久しぶりです! 僕です! こちら、迅雷五型改、鳴子沢小紋です!!」

 小紋はそれに呼応し、即座にシークレットコード付きの同朋シグナルを送った。

「おお、これは〝シンク・バイ・ユアセルフ〟の鳴子沢リーダーリーダーではありませんか!? こちらこそお久しぶりです! 協力体制を取る相手が、我らのアイドルの鳴子沢リーダーともなれば、我が中隊も、より一層気合が入るというものです!!」

「えっ!?」

「ほう、そちらではお噂になってはいませんか? こちらの基地では、シンク・バイ・ユアセルフの鳴子沢リーダーと言えば、我々フェイズファイター乗りの間では、これはもう相当な人気の的でして……。かく言う私めも、以前に一堂に会した同朋結束の集会の折り、あなたをお見かけした時からの大ファンなのであります……」

 中島一尉の何のかげりも感じさせない言い様に、

「そうなんですか……。そ、それは有難うございます……」

 小紋は、気恥ずかしくて、思い切り顔を真っ赤にしてしまった。

「私、中島博元は、正直申しまして、あなたのような魅力的な女性を虜にした〝ヴェルデムンドの背骨折り〟という男を妬ましく思っております。確かに彼は、我々戦士にとっては伝説上の男ですが、しかし、同じ男としてこの世に生を受けたからには、ここに連ねる一個中隊の一同も、私と同じ気持ちでありましょう」

 どうもこの中島という男。見るからに無骨そうなナリをしていながら、こういったことに言い慣れている節がある。

「あ、あの……。それは……僕的に、何と言って返したらいいか……」

 小紋は、そう言ったことを直接言われ慣れていないために、あたふたと戸惑いを見せる。

「はっはっは、それで良いのです、鳴子沢リーダー。私めどもは、あなたのそのような奥ゆかしい面にも惹かれておるのですから」

 中島はとにかく屈託がない。これは、よほど彼の率いる中隊員たちにも引き継がれていることが窺われる。彼らの編隊が、小紋の駆る迅雷五型改からでも目視出来る位置に来るや、全機が機体を左右に振ってその言葉に同意を示している。

「とにかくありがとうございます、中島一尉、そして〝神吹雪〟中隊のみなさん。……それでは僕はこれから揺動を掛けながら、潜入チームの援護に回ります。どうか、神吹雪中隊の方々もご武運を!!」

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