浮遊戦艦の中で72


 融合種ハイブリッダーは、地球上の戦闘用人工知能とは真逆に、日毎その実力を増している。

 戦闘をすればするほど、統計的にこちら側の被害は大きくなる一方で、さらに彼らの回避能力は目を見張るほど高くなっている。

 さらに言えば、あのデュバラ・デフーが地球上で初めて融合種ハイブリッダーとして生まれ変わってから三年以上。あれから融合種ハイブリッダーは確実に進化を遂げ、そのスピードも戦闘能力も以前より確実に高めて来ている。それと同時に、彼らの姿も以前とは比べ物にならぬほど大型化し、まるで悪魔か伝説上の生き物のように生物然としていた容姿自体も、今や機械生物と言うにほど近い幾何学的な姿に変貌を遂げている。

 それだけ融合種ハイブリッダーは、戦闘するに効果的な道を歩んでいるのだ。

「これで、暗礁ミサイルの効果が薄れていくようだったら、僕らも戦闘の在り方を根本から考え直さなきゃいけないよう……」

 小紋が焦燥に満ちた表情で言葉を言い終えた時、

「ナルコザワリーダー。ソロソロ、我ガ組織ノ、奪還チームガ突入ヲ開始スル時間デス――」

 人工知能疾風が、慌てふためくでもなく動揺を見せるでもなく、当初の作戦通りの時刻を告げる。

「分かったよ! もう少しで奪還チームの突入の時間だね。……だけど、このままじゃ、相手戦艦の突入口を見つけるどころか、相手に張り付く事さえ出来ないよ……。南雲部隊を猫じゃらしにされちゃったから!!」

 もうこうなれば、小紋が自ら浮遊戦艦に張り付くしか手立てがないのだ。

 その時である。

「ナルコザワリーダー。ココカラ西方、七十五度の地点ヨリ、高速接近スル機影ヲ確認――」

「なんだって!? それはどういう!?」

「飛来スル機影二確認シタトコロ、同朋ノ意思ヲ示ス、シグナルヲ受信――。照会二ヨリ、航空自衛隊蓼科山岳基地所属部隊ノ援軍ト判明シマシタ――」

「蓼科山岳基地!? ということは、三島連隊所属のフェイズファイター部隊!?」


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