浮遊戦艦の中で70


 拡散暗礁弾幕ミサイルは、迅雷五型改の背部収納スペースが左右に二門の砲台が展開され放たれる。

 各フェイズウォーカーへの装備は、平均で四発。暗礁微粒子と呼ばれる物質を高濃度で溜めて置く装置が割合に高重量なため、その程度しか積み込めないのが欠点である。

 しかし、そのミサイルを一発撃ちこめば、風の弱い日には一キロ立方メートルほどの範囲で効果を与えることが出来る。それは完全なる暗闇ではないものの、夜目の利かない融合種ハイブリッダー相手にアドバンテージを取るには持って来いの武器と言ってよい。

「暗礁弾幕ミサイルノ誘爆拡散ヲ確認――。ヨッテ、前方二疑似暗礁空間ガ展開サレマシタ。次ノご指示ヲ――」

 人工知能〝疾風はやて〟は、事も無げに言葉を言い切る。

「〝疾風はやて〟!! 次はこの迅雷五型改きたいを、あの疑似暗礁空間に突入させるから、こっちはそれと同時にモニターを暗礁モードに移行して! と同時に空中機雷の同時発射!! そしてロックワンドミサイルの迎撃準備だよ!!」

「了解シマシタ――。疑似暗礁空域ヘノ突入ト同時二、モニターヲ、暗礁モードへ移行。ソシテ……」

 小紋は、このやり取りがとにかくまどろっこしい。

 確かに、互いが確認し合うことで、より正確に、より第三者的に冷静な指示と受け入れが出来ることは分かる。

 しかし、あくまでもここに搭載されているのは、人間をサポートする意味での人工知能である。このやり取りをこなすだけでも、相当な時間的なロスがある。

(これじゃ本末転倒だよ……。それどころか、僕の間合いがどんどんずれて行くのが分かる。これが地球の人工知能の実情だよ……)

 

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