浮遊戦艦の中で㉖
「巨大人工知能たちは、自分たちが出せない結論を俺たち人間に委ねたってことでいいのか?」
言われてエナは、少し渋い表情になると、
「その言い方は悪い意味で間違ってる。だって、
「そうか。つまり、人類が丸投げするほど頼りにしていた巨大人工知能ってのは、俺たちが思うほどの頼りに出来る物じゃねえってことなんだな。ただ頭の出来が凄いだけの経験不足なデカ物だって解釈で良いんだな?」
「そうよ、ショウタロウ・ハザマ。その表現こそが、あなたが戦乱期に人々を束ねて行動を起こした切っ掛けなんだもの。そう、そしてあなたはこうも言っていたわ。知識なんて道具に過ぎない。能力なんて個性に過ぎない。しかし、それを生かすも殺すも経験で培った創意工夫が必要なんだ、ってね。そうよ、所詮人間が作り出した巨大人工知能なんて、人間が辿る道筋でしか成長の仕方を知らない。だから、巨大な人工知能たちはその経験を得るために人類に対して故意に騒乱となる切っ掛けを撒いた。全ては自分たちが成長する
「それで異次元の生物の脅威まで利用して、人類に更なる試練を与えたってわけか?」
「そうね。そうすることによって、人類が辿る道筋や苦悩、そして克服する様子なんかを観察して自分たちの経験とケーススタディをより強固なものにしようとしていたのよ。そう、だって今のあたしならそれが断言出来るわ」
「どういうことだ?」
「だってあたし……だってあたしの今のこの姿と意識は、この電脳世界のデータにしか存在していないんだもの。もうすでに物理的な肉体は現実には存在していないのよ。肉体は滅んでしまったのよ」
「何だって?」
「そう。でもね、あたしはあなたに感謝しているの。そのお陰でこうしてあなたに再び会えることが出来たし、巨大人工知能たちの真意も探ることが出来たし……」
「な……つまり、お前がその姿になっちまったのは、未来の俺が原因なのか? お前みたいな年端も行かねえ女の子をそんな姿にさせちまったって言うのか?」
「そ、そんなこと言わないで、ショウタロウ・ハザマ! あたしは感謝こそすれあなたを少しも恨んでなんかいないわ! それよりも早く記憶を取り戻して! 今、現実の世界はこんな悠長に話をしている場合ではないの! あなたの大切な人たちが大変なのよ!?」
「大切な人たち?」
「そうよ、特に小紋さんが!!」
「こ……こもん、だと?」
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