浮遊戦艦の中で㉕
「なんだと? それじゃあその話がお前の言う通りだってのなら、俺ァ巨大人工知能のデータの
「うーん、何とも言い得て妙な表現だけれど、確かにその通りだわ。あなたは言うなれば、巨大人工知能たちには持っていない部分を持っていたってことなの。その持っていない部分を補填するために泳がされて生け捕りにされた存在と言うわけ。つまり、生きた思考ユニットということね。でも、それにはあなただけでは成立しない。なぜなら、人間という生き物は相互的な干渉があってこそ、様々な力が働くからね」
「もしかして、だから沢山の人を生け捕りにする必要があったってことで良いのか?」
「ご名答。ようやくあなたにもこの状況が飲み込めてきたようね。つまり、何百万、何千万と言う人々の記憶を統合することによって、この浮遊戦艦に備わっている巨大人工知能はその相互的な認識を〝現実〟のものと判断し、そしてあなたの辿ってきた人生の記憶が
「そ、それじゃあ、泥棒根性丸出しじゃねえか……」
「そうね、そうとも言えるわね。でも、相手も必死よ。元々、あの戦乱であなた達人類を相手にしていた人工知能たちは、それを理由に戦乱を巻き起こしたって言っても過言ではないからね。いえ……当初からそれが目的だったのかもしれないわね」
「な、何だと!?」
「そう、あのヒューマンチューニング理論を強制的に政策として差し向けたのだって、考えてみれば可笑しなことよ。だって、どう考えたってあの政策には無理があるもの」
「無理がある……とは?」
「ええ。だって、体の一部を機械に換えたからって、本当にそれが今後の人類の為になると思って? あなたはね、ここで言う未来の戦争のときに、こういう考えを掲げて戦っていたわ。人間のという生き物はその土地や慣習に根付いている。だから、インスタントラーメンを作るみたいに簡単に身体を機械化させるってことは、それは人類を劣化させる導入を作ってしまうことだ、ってね」
「この俺がそんなことを?」
「そうよ。そんな考え方はあらゆる人々の同調を呼んで、そしてレジスタンスは巨大な反乱軍として組織されることとなったわ。でも、考えてみて。あの天文学的に計算能力に長けている優秀な巨大な人工知能が、そんな考えの選択肢に至らないこと自体が不自然というものだわ。どう考えたって、ヒューマンチューニング理論一択で政策を実行してしまうなんて可笑しいにも程があるわ」
「じゃあ、てえことはつまり……」
「そうね、考えられることは一つ」
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