フォール・アシッド・オー68
デュバラが、あの暗殺集団の秘匿技術〝珠玉の繭玉〟を勝手に持ち出し、それを使用した時からこの運命から逃れることは出来なくなっていた。
今現在は、地球のイスラム圏の国家が主体となり、量産された〝珠玉の繭玉〟を使用した
しかし、
(俺は、あの国が崩壊した時、幾万……幾百万という命があの技術によって奪われて行ったのをこの目で見てきた。その時から俺は、もうこうなることを運命づけられていたのかもしれん……)
デュバラは、自分の仕出かしたことを呪うように妙に納得した。
その時であった――
「デュ、デュバラさん!! あれ見て!!」
小紋が上空を見上げて指差した。
「な、何だ、あれは!?」
海からの多量に湿度を含んだ風が執拗に舞っている。そんな夏の夜空に、月明かりに照らされ、大翼の生えた大群がこちら側に勢いよく向かってくる。
「あ、あれは、もしかして……!? ヴェロン!? ヴェロンじゃない、デュバラさん!?」
小紋が、悲鳴にも似た声を上げた。
それは確かにあの凶獣とまで恐れられたヴェロンの大群に違いなかった。この漆黒に彩られた空の中にあっても、あの世界を生き抜いてきた彼らがその存在を見間違うはずがない。
「あ、ああ……あいれはいかにもヴェロンだ!! い、いかん、小紋殿!! 奴らは必ずここにやって来る! 早くここから引き上げるのだ!!」
デュバラは言うや、気を失い倒れたままのクリスティーナを連れ出そうとするが、
「なんだと!? ク、クリス!! クリスが居ない!?」
何と、傍らに寝かせていたクリスティーナの姿が見当たらない。
「なんだって!? クリスさんが!?」
小紋も聞いて彼女を探索するが、
「ど、何処にも居ないよう……デュバラさん。クリスさん、一体どこ行っちゃったんだろう?」
小紋とデュバラが困惑した表情で顔を見合わせていると、
「ウィヒイッヒッヒ……。このままテメエらを帰すと思うのかェ……」
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