フォール・アシッド・オー㊿
デュバラは拳を振り上げ、そこで立ち止まると
「ここからは、俺の真の姿で参る――!!」
言うや、彼は怒涛の如き突進を見せ、二分の一のサムライの懐に入る。
目にも止まらぬ速さで駆け寄ったデュバラの体躯は、二分の一のサムライの下腹の辺りからチャクラムを突き上げ、そのまま天高く飛翔する。
「この俺にも意地というものがある!! そう、生身である人間としてのな!!」
完全にデュバラの戦いへの本能が目覚めた瞬間だった。
今までは、暗殺集団のエリートとして技と精神を磨き続ける毎日であった。しかしこの瞬間、デュバラの中に長年に渡って培われて来た理想という名の核たる信念が根底を目覚めさせ、羽間正太郎と同様の闘神としての本能が覚醒したのだ。
「今の俺になら理解出来る! 羽間正太郎を始めとした〝自然派〟と呼ばれる男たちが、なぜあの場所に戦いの場を求めたのかという理由を――!! なぜあの弱肉強食たる生活のし難い世界でしのぎを削りつつも切磋琢磨して生き続ける理由を――!! あの場所は我々人類にとって忘れてはならない場所、人類が忘れかけたものを取り戻す為に作られた場所だったのだ!! このまま貴様らのような連中が、この地球に
デュバラの円月輪が、二分の一のサムライのバラバラに飛び回る頭部や肢体に向かって三日月のようにいかにも鋭い軌道を描く。その軌道の跡には、円月輪によって打ちのめされた各身体のパーツが力無くし床に散乱する。しかし――!!
「な、何だと!?」
黒い鎧にまとわれた各パーツは再び寄り集まると、一瞬にして人体の姿を形成し、元あった二分の一のサムライの姿に戻る。
「やってくれるぜ、この三日月野郎!! しかしよ、そうじゃなくちゃ戦いってのは面白くねえ……」
二分の一のサムライは仮面の奥で息せき切りながらも笑っている様子であった。まだ余裕があるようである。
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