フォール・アシッド・オー㊺
それまでデュバラに見えていた二分の一のサムライの動きは、まるで隙の無い完全無欠の剣士そのものであった。
(しかし何なのだ!? これではまるで不慣れな下々の社交ダンスではないか!? 一体これはどういうことなのだ!? 何ゆえにこうなるのだ!?)
それは、デュバラの中にあった
人の感情などの容量は様々である。それは、デュバラのようにいかに優れた人物であろうとも同じことである。
特に彼の中にあった負の感情――つまり、自分に備わっていない特別な才覚を有した者への劣等感は周りの者の比ではなかった。
そういった負の感情のエネルギーが彼の冷静な視野を妨げていたのである。とりもなおさず、それは彼のように特に秀でた才覚の持ち主であろうともその例外ではない。すなわち、負の感情、負のこだわりのエネルギーは特に感情の容量を席巻しやすいということなのだ。ゆえに、ありのままの状況を把握するという、単純かつ一番重要な要素を妨げてしまっていたというわけである。
(何はともあれ、奴に幾分の隙は見えて来た。あの二分の一のサムライと申す者……。あれはどうやらあの男の
デュバラはそう思うや、凶獣ヴェロンの王ヴェリダスに感謝した。きっと彼の言わしめんとしたことはこのことなのだろう。いかに半身であろうとも、これを他者から言われてすぐに納得出来るものではない。いかに言葉でねじ伏せられても、心底相手の真意を得るのは難しい。それをヴェリダスは全て理解してのことだったのだ。
この
(なれば、この俺にも勝機は見えて来た。相手が小紋殿の掛け替えのない人物でないのなら尚更のこと。今までの俺は、本当の覚悟というものは死を覚悟するものだと思っていた。しかし、そうではないことに気付けた。本当の覚悟とは、全ての負のこだわりを捨て去ったときに見えて来るものなのだ!!)
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