フォール・アシッド・オー㊳
「テメエの考えてるこたァ、こちとらお見通しだ。そんな技なんて屁でもねえんだよ!」
二分の一のサムライは言うや、デュバラの耳元を離れると彼の背中に激しい蹴りの一撃を入れる。
(ぐおっ……!!)
デュバラは不意を突かれたのと同時に、なぜ二分の一のサムライがそこに居るのかが理解出来ず気が動転した。
「デュバラさん!!」
「デューク!!」
その光景を傍から見ていた小紋とクリスティーナは叫ぶが、彼女たちも余りの一瞬の出来事にそれ以上の言葉が出ない。
デュバラは、すぐさまその大きな体を反転させて防御態勢を取るが、二分の一のサムライの攻勢は止まず、これ見よがしに大刀を縦横無尽に振り下ろす。
「オラオラオラ!! 下手に小細工なんか打ってんじゃねえよ!! 俺ァそういうのを望んでんじゃねえ!!」
しかし、何という形勢逆転の攻撃であろうか。あれだけの光輪のプレッシャーの中を、こうもいとも容易に抜け出して攻撃を仕掛けて来る。それは誰の目に見ても不自然であり、キツネにつままれたような感覚である。
(一体この男、どうやって……!?)
デュバラは、防御一辺倒となりながらも必死で考えた。あのネズミの通る隙間もない光輪に阻まれながらも、この二分の一のサムライという男はどうやってそこから抜け出したのであろうか。
そして、鎧にすら傷一つ付けることなく、汗水一つ垂らしている様子もなく、まるで時空を超えたように瞬時に背後に現れたという事実はどういった経緯があったものだろうか。
如何せん、戦いの中でこのギミックを解き明かして行くのは難しい。ここまで力の差が歴然とした今、かなりの劣勢に立たされている身で相手を分析できるほどの余裕が無い。
(くうっ……!! こちら側が探りを入れたと思えば、逆に難題を強いられたわ!! こ奴、一体どのような頭をしているのだ!?)
戦略的なことで考えれば、相手に真意を悟られぬよう次々と難題を吹っ掛けるのは常套手段。
しかし、このように相手を目前にしたまま、さらに攻防を繰り返している状態でそれを行うのは神技に近い。
(し、しかし……。いくらこ奴が〝ミックス〟だとしても、ここまで頭が回るのは不自然だ。きっとここに何らかのヒントが隠されているはずだ……!!)
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