フォール・アシッド・オー㊲


 デュバラは気を張り詰め、再び六道邪神烈波りくどうじゃしんれっぱの体勢を取る。

 翼を広げ、念を込め、翼の一部である羽根の一枚一枚に魂を入れた。放たれた光輪はさらなる回転を増し、再び空中に曼荼羅マンダラ絵図でも広げたかのような幾何学模様の軌道を描く。

(たとえこれが致命的なダメージとならねども、その先にある何かに近づくことが出来るはず……!! それゆえに、俺は乾坤一擲けんこんいってきの思いでこれを打つ!) 

 デュバラの熱を込めて放たれた光輪は、以前のものよりも一層高速が増している。

「今だよ、デュバラさん!!」

 小紋の掛け声と共に、再び六つの光輪が二分の一のサムライに襲い掛かった。

 しかし今度は以前よりも光輪が大きくなり回転速度も上がり見るからに威力が増している。

 それを傍から窺っていた小紋は、

(これは、このまま行けるかもしれない……!?)

 と、咄嗟に思えるぐらいの迫力である。

 否や、念の込められた光輪が二分の一のサムライの身体全体を包む。どのような相手でも、この光の圧迫から逃れることは出来ない。もし逃れられるとするならば、自らの意思で身体を微塵に砕かせ、糸の切れたマリオネットのようにバラバラになって光輪の合間を縫って出るしか方法はない。

(しかし、いかにこ奴がであろうとも、そのような芸当は不可能!! 人の皮を被った化け物め、再びこの俺の技の切れ味を味わうが良い!!)

 デュバラは、半信半疑ではあるが、あわよくばこの技で鬼神を倒せるのではないかと目論んでいた。とりもなおさず、この技には逃げ道は無い。人対人、人ならざる者対人ならざる者。もしどのように対戦しようとも、物理的にこの殺人的光輪の圧迫空間から逃れるとこなど不可能なのである。

 だがしかし――

「へへっ、甘いぜ」

 なぜか二分の一のサムライは、デュバラの背後に立っていた。しかも余裕の笑い声で、その張りつめた雰囲気をまるで持て余すかのように。

(な、なんだと、どういうことだ……!?)

 

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