フォール・アシッド・オー㉛



(小紋殿、すまない。これで俺は自分の役目を知ることが出来た。もう少しで俺は自分を見失うところだった、いたく感謝する……。ともなれば、俺はそなたがあ奴の注意を惹き付けている隙を狙えば良いのだな……)

 デュバラは立ち上がると大きな翼を目一杯広げた。そして二人の攻防を凝視し、一撃を打ち込めるタイミングを虎視眈々と狙い定める。

 だがしかし……

(デュバラさん!! 単純に考えちゃ駄目だよ。特に今は……。絶対にこの黒い人は、僕とデュバラさんがタッグを組んだ時点でそれに気づいてる。それが証拠に、この黒い人はこんなにダメージを与えてもピクリとも動いてないんだもの。ということはね、向こうも考えがあって動いて居ないってことなんだよ! どんなことがあっても相手を嘗めちゃいけない。これはいつも羽間さんから言われていた言葉なんだ。それに何て言ったって、この黒い人は只者じゃないんだから……)

 攻撃を打ち続ける小紋は、そう言う意図を瞳の動きだけで送った。相手がデュバラなら、これで伝わると確信してのことだ。

 しかし小紋としては、内心そのようなリアクションですらしたくはなかった。なぜなら、相対する二分の一のサムライは並大抵の男ではない。どのように小さく、一見して気づきにくい行動ですら認識してしまっている可能性が高いのだ。ともなれば、今のやり取りですらこちらの胸の内を読まれてしまっているやも知れない。それが命取りになるやもしれない。

 しかし、これが身体の半分を機械に換装してしまった〝ミックス〟ともなれば、〝インタラティブコネクト技術〟を使い、二人の間だけで心の中のやり取りをすることも可能である。だが、小紋は生粋のネイチャーである。そして、デュバラ・デフーは融合種ハイブリッダーでこそあれど、〝ミックス〟と呼ばれるサイボーグではない。

 つまり、そのような特殊技術を持たない彼らは、古来からの人間のように現状を正確に判断し、さらに互いの性格などを深く配慮した上でそれ相応の対処をして行かねばならないのだ。

(デュバラさん! デュバラさんが攻め込むチャンスはそうあるわけじゃない。僕だってこのまま攻撃を打ち続けるだけの体力があるわけじゃない。きっとこの黒い人は、それを逆算してそのタイミングを予測しているはずだからね。だからね、どこかで僕たちは、はったりを仕掛ける必要があるということなんだよ!!)




 

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