フォール・アシッド・オー⑱
大男は分厚い体を揺らつつ、表情を歪ませながら口角から泡を飛ばした。
どうやら彼らには言葉は伝わらないようである。どんな議論を交わしたところで、行きつくところは自分たちは先天的な被害者であるがゆえに、そちらに非があるとの一点張りである。
こういった考えを持つ者に対し、真正面から意見を交わしたところで話になるはずもない。
なぜなら、
(なら、私たちにどうしろというの……? 私たちが泣いて謝って、その上に顔をボコボコ殴って変形されてしまえば気が済むとでもいうのかしら……)
という着地点になってしまうからである。
彼らのような歪みに歪んだ論理は、やがて現実とは程遠い彼らにとって非常に都合の良い楽園を作る動機となってしまう。
小紋、クリスティーナ、デュバラの三人は、
「この人たちは、こんな考えでサイボーグになったんだ……」
「私だって、あなた達以上に苦労はしてきたつもりよ……」
「あの女狐め……。あの女も厄介だが、こいつらもそれと同等に厄介だな……」
それぞれが口々にぼそりとつぶやいた。
教団と言うからには、何らかの思想や哲学などで研鑽に至る団体であるかと思いきや、やはりあの建物の見た目と同じように、彼らの至るところは、外見であるとか、力であるとかの表面的な部分を夢想するだけでしかないのだ。それはとても稚拙で自己中心的な考えであると言わざるを得ない。
「だからどうしろというのだ!? このまま俺とやり合おうと言うのか!?」
デュバラは大声で言い放った。考えが真っすぐで情熱家の彼である。このような甘々しく歪んだ考えにとことん怒りが込み上がって来ている。
だが、大男の方は、
「誰がキミとやり合うと言った? 我々とて、キミが相当な腕を持った熟練者であることぐらいは理解している。そのような相手とまともにやり合っては、命をドブに捨てたようなものだ」
そう言って不敵な笑みを浮かべる。
「では何とする!? ここまで来て、この俺たち三人をこのまま見過ごすわけでもなかろう!!」
デュバラが言うと、
「いかにも。キミたちはかなり危険だ。我々教団にとって相当な脅威となり得る存在だ」
「ともなれば……?」
「言うに及ばず、この世から消え去ってもらうまでよ」
大男が言って言葉を終えた時、デュバラは懐に入れたチャクラムに手を掛ける。しかし、
「おっと、それには気が早い。キミたちの相手は、我々教団の幹部の方ではない。それ専門のお方がいる」
「専門のお方だと……!?」
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