楽園へのドア⑪
エリックの右足に得も言われぬ衝撃が走る!
ガシン――!!
今にも鼓膜をつんざきそうな音が鳴った。それと共にエリックの右足に途轍もない激痛が走る。
「あうっ……!?」
刹那、何が起きたのか分からなかった。輸送車の外装に身を寄せ張り付いて居た体全体が瞬間跳ね上がり、勢いで地上へと転げ落ちそうになる。
エリックの身体は二転三転し、車両の後方へと押しやられた。森の中の走行とは言え、優にそのスピードは時速120キロメートル以上。その風圧は黙って外壁にへばりついていても尋常ならざるものである。彼は一度方向感覚を失ったが、咄嗟に輸送車の開閉ハッチの取っ手に左腕を伸ばし、それをがっちりと掴んだ。
「ぐううっ……!!」
掴むと同時に彼の身体は外壁に強烈に叩きつけられ、勢い余って思いきりバウンドする。
気を失い掛けた。背中をもろに打った。そのせいで、
エリックはそれでも左手をハッチの取っ手から離さなかった。これは彼の諜報員としての優れた部分であり、瞬間的に生存を求める本能的行為である。
しかし――
(し、しまった!! 採取装置が……!!)
右手に持っていたDNAサンプル採取装置を勢いで手放してしまっていた。あれが無ければ後進の役に立とうとも立てる手立てが無い。そればかりか、
「う、うおぉぉぉっ……!!」
足を踏ん張ろうとした瞬間に、思いがけないほどの激痛が全身を襲った。何と、彼の右膝から下が見事に切断されていたのだ。
エリックは余りの痛みに雄叫びを上げた。そして余りの絶望に頬をひきつらせた。
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