楽園へのドア④


 その黒い飛翔体は一つ、二つ、三つと順次飛び出し行き、襲い来る凶獣ヴェロンに体当たりをぶちかます。

「す、すげえ! なんて速さだ!!」

 なんと飛翔体の動きはヴェロンの更にその上をゆく。

 ヴェロンは、このヴェルデムンド世界で最強の生物である。しかし、黒い飛翔体は一見しただけもその動きを凌駕した。

 バサリ! バサリ――!!

 凶獣とまで恐れられたヴェロンの群れが、次々と黒い飛翔体によって打ちのめされてゆく。その様は、まるで風に乗って宙に舞った紙飛行機が、息もつかせぬ間合いで弾丸に狙い撃ち落とされたかのようである。 

「どう言うんだ一体。まるで一瞬だぜ……。ありゃあ何なんだよ!?」 

 正太郎は茫然と空を見上げていた。他の乗員たちも同様である。すると、

「ええ、ありゃ、漆黒の死刑執行隊の仕業ですぜ。墓石売りのダンナ……」

 かなちょろのエリックがつぶやいた。

「漆黒の死刑執行隊……だと?」

「そうで御座いやす。人呼んで漆黒の死刑執行隊。地球とこの世界の間の番人で御座いやす」

「な、なんだと……!? なぜお前がそんな事を知っている?」

「だから言ったでしょう? あっしは、ある目的のためにここに乗り込んだと」

 エリックが視線を空に向けると、飛翔体らはその姿を輸送車両の上に留めた。無論、六体あったヴェロンは見るも無残に砕け散り、霧の木の葉と姿を変えていた。

「こ、こいつら……。人間なのか……?」 

 その姿は精悍であり異様である。人間の等身より大きな身体に黒のプロテクトスーツを身にまとい、その背中からはまるで蝙蝠こうもりのような大きな羽が生えている。

「いいえ、こいつらは人間であって人間では御座いません」

「人間じゃねえ? じゃあ、アンドロイドか? それともサイボーグか?」

「どちらでも御座いませんよ。奴らは人間の進化した姿……。融合種ハイブリッダーと呼ばれる人種です」

「ハイブリッダー!?」



 

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