楽園へのドア⑤
正太郎はその名を耳にするのは初めてだった。しかし、どこかで見覚えがある。
(そ、そうか……!! あれはもしかすると……)
正太郎の脳裏に稲妻が走った。
以前にアヴェル・アルサンダールらとやり合った第十五寄留の危機と崩壊。その混乱時に目撃したのが、あの〝融合体〟である。あの無機物と有機物の物の見事なフォルムは、第十五寄留の森が焼ける時に見た
「へえ、流石は墓石売りのダンナだ。どうやら以前にこいつらを目にしたことが御座いやすね?」
エリックはニヤリと笑う。
「い、いや……。俺ァ、こんな奴を見るのは初めてだ。こんな
「ほほう。ということは、ダンナは御存じなので御座いやすね。あの組織の存在を……」
「黄金の円月輪……か」
「へえ。その通りで」
黄金の円月輪――。
それは、羽間正太郎の師であるゲネック・アルサンダールが生前に頭領を務めた暗殺集団である。
そしてゲネックが一線を退いた以後、指導権は息子のアヴェル・アルサンダールに継がれ、その彼によってあの〝融合体〟の実験が行われたのである。
しかし何の因果か、その実験が何者かの逆鱗に触れ、第十五寄留に凶獣ヴェロンの大群を呼び寄せてしまった。そしてその時に浮き彫りになったのが、まだ未完成の〝
「あれが完成していたのか……」
「へい、近頃の話ですが」
「しかし、あれから奴らは影を潜めていたようだが」
「いえ、そうでは御座いませんよ。奴らは目だって活動しておりやした」
「なにっ? 俺ァそんな話、聞いたこたあねえぞ?」
「そりゃそうで御座いやすとも。なにせ、奴らの拠点は今や地球で御座いやすからね」
「な、なんだと!?」
正太郎が驚きの余り目を見開く中、輸送車両の乗員たちは漆黒の死刑執行隊の精悍な姿に魅了されていた。ある者は胸の前で十字を切り、ある者は両手を合わせ眉間にしわを寄せぶつぶつと何かをつぶやく。そしてある者は涙を瞳に溜め込みつつ感謝の言葉を彼らに投げかける。
「どうです? これが奴らのやり方で御座いやすヨ。これならば、誰しもこぞって
エリックはまた不敵な笑みを浮かべる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます