神々の旗印242
マリダが自戒を含めて言葉を放つと、
「ならさ、話は早いじゃねえか。こうなりゃ、虎穴に入らずんば虎子を得ずってね。誰かがあの浮遊戦艦に乗り込むしかねえってこった。そうで御座いましょう、女王様?」
正太郎はしたり顔で言い返した。あの声の主が当の本人の物であるかどうかを探るには、直接窺って確かめるのが一番である。しかし――
一同はその意見に対して当然のごとく黙り込んでしまう。正太郎は構わず続けた。
「まあ、そりゃあ誰だって見ず知らずの場所に潜り込むのは勇気の要ることさ。だけどよ、それをやらなきゃ、一歩も先に進めねえってのはこの世の道理なはずだぜ?」
正太郎に
無論、そんなことは誰もが分かっている。ここ居る誰しもが理解をしている。だが、その現実が難しいのだ。それゆえに、誰もが口にしたくても口に出来なかったのだ――。
ペルゼデール軍のスパイの育成は言うに及ばす充分である。いかなる状況に於いても、それに
しかし――
相手は、あの浮遊戦艦を飛ばしてくるほどの科学力を持った敵なのだ。いかに訓練を受けたスパイであろうとも、無事任務をこなし、五体満足の状態で敵側の情報を持ち帰って来られる可能性は低い。例え無事に帰って来たとしても、逆に洗脳を受け、ミイラ取りがミイラになって帰って来てしまう可能性が高いのだ。
「羽間少佐! キミはその役目を誰にやらせようというのかね!? 確かに情報を得るにはスパイを潜り込ませるのは常套手段だ。しかし、あの浮遊戦艦は完全な未知なる勢力なのだぞ! 相手がこちら側の内情を知っているともなれば、それは異星人との遭遇よりも段違いに不利な状況なのだ! そんな不穏な渦中に、おいそれと大切な兵をつぎ込めるはずがないだろう!!」
情報将校の草壁中佐が声を荒らげて正太郎を叱責する。無論、スパイの養成にはかなりの時間が掛かり金も掛かる。その上、そこに抜擢される人員は、軍の中でも飛び切り優秀な者たちが引き抜かれて構成されている。そんな諜報員たちを、むざむざミイラにされてしまっては心許ないというのが本音なのだ。
「ああ、そんなことは、こんなド素人の俺だって心得ておりますぜ、中佐殿。だから言っているのさ。この俺が役目を引き受けるって」
「き、貴様がか、羽間少佐!?」
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