神々の旗印243
「ああ、だからこっちから言い出したんだろ。それをやればいいって。この俺がさあ……」
正太郎はあっけらかんとした表情で答えた。それがさも当然といった感じで。
「し、しかし……、貴様はゲリラ戦の軍師であり戦士の役割であって、我々のような諜報活動などとは無縁なはずだ……」
「だから良いんじゃないですかね、草壁中佐。元々スパイマスターだったあんたなら何となく想像出来んでしょうに? 相手方は、この俺とこちらにおわす女王陛下をピンポイントで揺さぶりをかけて来た。てえことはよ、つまりだな……、その逆にこっちから乗っかっちまうってのも手じゃねえんですかい。その方が成り行きとしても自然だし、何より顔パスであっち側に受け入れられそうじゃねえですか」
「し、しかしだな……。もし、相手方の考えが、ただ貴様を呼び寄せて抹殺する目的なのだとしたら……。もし、貴様を洗脳してこちら側に攻めて来ようとする目的なのだとしたら……」
「なんだよ、中佐。それならそれで、この俺に持って来いのシチュエーションじゃねえか。そん時は命の限りとことん暴れまわってやるぜ?」
「いやしかし、現実はそんなに上手く行くものではないぞ」
「んなこたァ十分解かってるさ。俺だって一応軍師の端くれだからな。そして、一度はゲッスンの谷でたった一人の潜入作戦を仕掛けたことのある身だ。この俺に諜報員としての適性が無いことぐらいは心得ていらァ。でもよ、よく考えてみてくれ。スパイマスターのあんたが、相手方の首謀者視点でその様子を観察していた時、この俺がのこのこ浮遊戦艦のど真ん中に余裕しゃくしゃくと言った具合で足を踏み入れてきたらどう思う? そして、どう対処する? もし、俺がその相手方の首謀者だったら、逆に内心が読めなくてドギマギしちまうってもんだぜ!」
正太郎は瞳を爛々と輝かせ、草壁中佐に問う。
「いや、しかし……」
「しかしもへったくれもあるかってのよ。今は、どうあっても相手方の情報を手に入れたいって時に、何も何もしないで机上の空論に手をこまねいているようじゃ何も出来ないんだぜ? だけど、中佐たちが思っているように、あの浮遊戦艦に中佐の部下を総動員するのは俺だって賛成しねえよ。だって、それは適正配置とは言えねえ状態だからな。だから、適正配置という点で物事を考えた時、やっぱりこの俺があそこに乗り込むのが一番妥当なんだ。何しろ相手は、この俺のことを知った上で小紋の声を当てて来たんだからな。それに……」
「それに? それに、まだ何かあるのかね、少佐?」
「ああ、それにだな。さっきの続きなんだけど、この俺がすっとぼけた態度で浮遊戦艦に乗り込んだ時、相手方がどんな反応するかこの目で見てみてえじゃねえか。どうだ? 結構興味ありありだろ?」
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