神々の旗印241

「なるほど、真の目的ですか……」

「ええ、敵の真の目的です」

 剣崎大佐が言い切ると、そこで一同は再び黙した。なにせ、今のこの状態は五里霧中なのである。どこにどうやって作戦を立てるか以前に、敵側となる相手の正体も組織表も分からない状況なのだ。

 そこに来て、こちらの敵側となる浮遊戦艦は、女王マリダの存在や、羽間正太郎の存在を知った上で、あのような行動を仕掛けて来た。

 昔からの兵法書にもあるように、

「彼を知りて己を知れば百戦してあやうからず」

 というのが戦略の基本である。今現在の人々の認識能力において、それ以上の王道もなければ、それ以下の奇策すら存在しない。それは集団として生を受けた生物の基本原理に他ならないからである。

「マリダ陛下。敵側の真意や目的が分からなければ、無闇にこちら側から行動は起こせませぬ」

 一人の幕僚が言葉を放つと、

「ええ、わたくしも同様に考えております。あの浮遊戦艦から聞こえて来た声の主が、このわたくしの想像し得る当人であったとすれば、それはとても忌々しき事態だと言えます。しかし、それは個人的な見解であると自負してもおります。ですが、たったそれだけの情報で……そして、たった一人だけの感情でこの事態に対処する方策を巡らすのは危険極まりない事なのです。そうでありますね、羽間少佐?」

 マリダが、しかめっ面で腕組みをしていた正太郎に話を振ると、

「あ、ああ……、その通りだぜ、マリダ……い、いや、マリダ女王陛下。確かにそりゃあ、その言葉は俺への当てつけかもしれねえが、そのご忠告はそっくりそのまま受け取っておくぜ。何しろ女王陛下は、ここに居る誰よりもご自身がその事に気を付けているらっしゃるんだろうからな」

「コ、コレッ、少佐! 御前であるぞ! マリダ陛下に失礼な事を申すな!!」

 年老いた女性従者レベッカが正太郎を叱責する。

「いいのです、レベッカ。それは正太郎様の仰る通りなのですから。アンドロイドであるわたくしとて、このように人々と同じ感情を持っております。それだけに、あの方の……小紋様の声を聞いてしまっただけで、本当は動揺を隠しきれなかったのですから」

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