神々の旗印231
正太郎は元来、様々な可能性を模索することにやぶさかな存在ではない。それは当然、彼を商人として活かすための根幹として植え付けられている。彼自身もそのことに関して揺ぎ無い自覚を持っているつもりだった。
しかし、どうもこの件に関しては納得がいかない。なぜか感情の行き所が見当たらないのだ。
確かに、小紋の父、鳴子沢大膳に真実を聞かされるまでは、彼も小紋のことをミックスだと信じて疑わなかった。なぜなら、フェイズウォーカーのパイロットとしても彼の弟子としても、彼女は生身の人間であるネイチャーの域を超えていたからだ。
その上、体力的にも小柄であり女性であるという不利な条件を抱えながら、彼女は正太郎との鍛錬にひたすら前向きな態度でことに当たっていた。
そんな彼女が、まさか生身のネイチャーであるこだわりを捨て、容易に機械の身体に乗り換えてしまうなどと……。
(こんな馬鹿な話ってあるか!! ちょっと会わねえ間にお前の中で何が変わっちまったんだ!?)
正太郎はとても裏切られた気持ちだった。
彼は、彼女を弟子として、そしてさらに一人の女性として以上に彼女を大切に思っていた。唯一無二の掛け替えのない存在として大切に接してきた。
だがこうして見るに、彼女はもう一人の独自の存在として正太郎の元から巣立って行ってしまった。彼の意思とは別の場所へと旅立ってしまったようなのだ。
そして、こういった混迷する別の次元での潮流を経て、何らかの新しい考えを仕入れてこのヴェルデムンドという弱肉強食の大地に戻って来たのかもしれない。
「ヴェルデムンドに住む皆さん! 僕は戦争が嫌いです! 争いごとが大嫌いです! 人間が人間としてその本能を抱え続ける以上、人間は争いごとを
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