神々の旗印230


 正太郎は複雑な胸の高鳴りが抑えられなかった。

 あれだけ濃密な時間を過ごし、親子とも夫婦とも言い知れぬほどの関係を築き上げてきたあの小紋が、いきなり敵となり得る浮遊戦艦に搭乗してきたと思いきや、こちら側が思いもよらぬ言葉を放ってきたのだ。

 正太郎は、彼女の一声を聞いたことで、彼女がまだ存命であったことを知り安堵した。しかし、その安堵とは裏腹に、彼女の放つ言葉の内容とは自分たちの主張とは全く相反する考えを表したものであったことに戸惑いを隠せなかった。

(小紋! もしかしてお前、その存在の全てを機械に変えちまったって言うのか……!?)

 もしあの声が小紋のものなら、彼女は機械の身体を肯定する発言をしていた。機械の身体の素晴らしさを説くためにこの世界に戻って来たと言った。それは一言で言えば、彼女自身が機械の身体にその身を置き替えてしまったということを意味する。自分の身体を、アンドロイド、もしくはサイボーグに変えてしまったことを示唆しているのだ。

(し、しかしよ、小紋……。俺ァ、別に元からミックスの存在を全否定しているわけじゃねえ。だがよ、この腹の底から納得のいかねえ気持ちは何だ? この込み上がって来る憤懣やる方ねえ感情の高ぶりは何だって言うんだ!?)

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