神々の旗印223


 そこで七尾大尉は腕を抱え、唸り声を上げながら、

「何とも凄まじいことですな。やはり大天才科学者の考えはわたしらの思考の斜め上を行く……」

「そういうことですよ、大尉。確かに烈太郎も烈風七型高速機動試作機も群を抜いて素晴らしい機体だ。それは手前味噌かもしれねえけど、ここまで一緒にやって来た俺だからその言葉は手放しで認めることが出来る」

「なるほど。つまり、羽間少佐が仰りたいのは、極端すぎると言いたいのですね?」

「ああ、そうさ、何だか何もかもが極端なのさ。天才博士って奴さ」

「それは分かる話ですよ。何事も過ぎたるは猶及ばざるが如しと言いますからね。少佐が度々お会いしていたと噂される鈴木源太郎博士の話にも相通じる話です」

「源太郎博士と?」

「ええ、そうです。私がこの間のブリーフィングで伺ったところ、少佐の仰っていた鈴木源太郎博士の思想根底と言うのは極端そのものです」

「例えばどういったところが?」

「ええ。それは地球人類が皆、幼稚で愚かな存在であると定義している所です」

「しかし、源太郎博士の言うことは間違いではないはず……」

「ええ、しかし……。それが人間という物です。どんなに人類の全てが賢くて見識があって感覚に優れているように進化したとしても、それは本当に人類なのでしょうか? もし、仮に人類全体が源太郎博士の目指すものに変容したとしても、またそこで互いに不平や不満を抱かぬとも限りません。現に、古代の人々より我々の方が多少の知能の変容が見られているとも言われています。しかし……」

「しかし……。そうか、しかし、今の人類だって昔とやっている諍いや争いは変わらない」

「ということは、もしかすると源太郎博士の行動は徒労に終わるやもしれません……」

「なるほど……。てえことは、大尉。源太郎博士の考えは、現状にある人類の愚かと思える部分に対する極端な反動だと言いたいんですね?」

「ええ。その通りです。そして桐野博士もそう。彼らは大天才であるがゆえに理想が高すぎるのです。という概念を飛び越してしまっているです」

「いい塩梅あんばい、か。なるほどね……」

 流石は年の功。七尾大尉はいいことを言う。正太郎は唸り声を上げて黙り込んでしまった。


 

 

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