神々の旗印200
「羽間少佐。貴様は元々、あらゆる分野の珍品を扱う商人だという話だったな。それもかなり際どいものを扱う武器商人であると……」
「あ、ああ……。そりゃあ事実だぜ、大佐。なにせ、まだ俺ァバリバリの現役商人だと自負しているしな」
「ならば問おう。貴様は、鈴木源太郎と言う名を知っておるか?」
「ああ、当たりき車力車引きってね。当然そりゃあ知っているさ。鈴木源太郎博士と言えば、裏の世界じゃ知らねえ奴は一人も居ねえ、正真正銘の大天才……そして、文科省推薦の百科事典に判で押したぐれえのひでえマッドサイエンティストだったからな」
正太郎は過去に、その鈴木源太郎という名の科学者と幾度か顔を合わせたことがある。その記憶は彼の脳裏に鮮明に残っている。
それはまだ、正太郎が若くして駆け出しの商人であった頃――。
彼は酷く焦っていた。
(俺はもっと実感のある取引がしてえ。もっとこう、世の中の動向を左右させるぐれえのでっかい商売がしてえ……)
それは若気の至りであった。食うに金で困るわけでもない。寝る場所に金で困るわけでもなければ、女を抱くのに寝床に困るわけでもない。しかし、男として生まれて来た以上、どうしても世の中に何らかの影響がある大仕事を夢見てしまうのである。
そんな若かりし頃の彼が風の噂で耳にしたのが、
「鈴木源太郎博士の作りし珍品は、その筋では目の飛び出るぐらい高い値が付く。そして世界が変わる」
というものであった。
(あの博士の珍品でも売りさばけば、この俺の名も、この世界にちったあ知られることになるかもしれねえ……)
そう思い立った彼は、あらゆる
しかし、鈴木源太郎博士という名は裏の世界では名が通っていても、誰しもその顔を拝んだことがない。
正太郎は、あまりにも源太郎博士の探索に歳月と経費を掛け過ぎた。そのために、今まで地道に積み上げて来た顧客が遠ざかって行ってしまった。案の定、彼の商売は次第に先行きが見えない状態にまで陥ってしまったのである。
それでも彼は憑りつかれたように源太郎博士の探索を諦めきれなかった。
そんなあるの晩の事――
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