神々の旗印199


 そこで言葉発したのは女王マリダである。

 マリダは、正太郎と二人きりの時に見せた雰囲気と一線を画し、

「正太郎サマ。この話は全くの冗談ではありません。今や地球はロボットの住む街……いいえ、わたくしのようなアンドロイドが跋扈ばっこする世界に変わり果ててしまったのです。それを直接お伝えしたくてわたくしはやって参りました」

「な、なんだと!? そ、そんな下手な冗談が受け入れられるとでも思っているのか、マリダ!? そんな馬鹿なことが現実になっちまうと思うのかい!?」

 正太郎が語気を荒らげて大きく身振りを振舞うと、

「羽間少佐、女王陛下の御前であるぞ!! いかに陛下と馴染みの関係であったといえ言葉と態度を慎め!!」

 剣崎大佐が地鳴りのような大声で彼を制す。

「し、しかし大佐!! そ、そんな事言ったってよ! そんな事言ったって……」

「羽間少佐!! それが我々の掴んだ確実な情報なのだ!! 貴様も知っておるだろう? ジェリー・アトキンスと言う名を?」

「ジェリー・アトキンス? ああ、そりゃあ知っているさ。五年前に一緒に反乱軍で戦ったエースパイロットだからな。それに、最近何かと俺の周りにちょくちょく顔を出したりしていたしな」

「そのジェリー・アトキンスという男な。もう、百年以上も前にアメリカ空軍に在籍していた士官だ……」

「な、何!? それは何かの間違いじゃあねえのか? 同姓同名って事だって考えられるしよ!」

「それは我々も同様に考えた。しかし、全く同じ顔をし、全く同じ名前をした人物が同じ軍籍に百年間もいる筈がない」

「し、しかしよ。俺ァ、一緒に戦ったんだぜ、あの五年前の戦乱でよ。確かにお高く留まって気に入らねえところもあったが、そりゃあ奴のパイロットとしての腕は確かだったぜ。そんな奴が、アンドロイドであるはずが……」

 と、正太郎がそこまで言い終えた時、自分自身で放った言葉にハッとせざるを得なかった。そう、それ程の飛び抜けた腕前を持ったパイロットなればこそ、逆にアンドロイドに本人の能力をコピーすることも可能なのだと――。

 正太郎が口ごもっていると、

「おまけにもっと良いことを教えてやる」

 と、さらに地響きにも似た声で剣崎大佐が追い打ちをかける。「奴らはカルトだ。自分たちが機械であることに何ら抵抗も無ければ疑惑すら抱いていない。その身体こそが至上の喜びであり、永遠の幸福であると刷り込まれている」

「な、なんだと!?」


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