神々の旗印163

「人間に成り損ないで悪かったですね! そう言うユートさんだって、今の姿は〝人間〟ではないでありませんか!! そんな見っともないなりをして言うセリフですか!?」

「な、なんだと!! もう一遍言ってみろ!!」

「ええ、何度でも言ってあげます!! あなたの今の姿は、今までで一番最低です、汚いです!! そう、わたしはその姿かたちを言っているのではありません、あなたのその姿勢とでも言うか、心構えが汚いと言っているのです!」

「心構え? 汚い……?」

「ええ、そうです! だって、自分自身の姿に角を生やして、さらには大仰に羽根まで生やしちゃって! それはあなたの自信の無さを隠し立てする証明です! ほら、見てごらんなさい。こちらにいらっしゃる少佐なんか、何の飾り気が無くても、こんなに強そうで恰好が良い。それに結構イケメンだし……。それに比べてユートさんは……」

 早雲ははそこでわざとらしく勇斗を全身舐めるように見やる。勇斗をいかにも挑発するような仕草で。

 兎に角、彼女も口で負けてはいない。彼女は人工知能と言えども、与えられた性格性別は女。いくらファンタジーな力を手に入れたとしても精神年齢が少年のままの勇斗に勝ち目などない。

 そんな光景を傍からうかがっていた正太郎は、

「は……早雲ちゃん。そのくらいにしておいてくれないか。今の勇斗をあまり挑発すんなよ……。今のこの俺の傷具合じゃあ、奴とやり合っても勝ち目はねえんだからよう……」

「いいえ、少佐! わたし、今、かなり頭に来てるんです!! 何だかとても裏切られた気分とでも言うか。ホント、今まで期待して損しちゃった!」

 早雲は、その可愛らしい唇をへの字に曲げてぷんすかと怒りをあらわにしている。

 正太郎は、彼女が人工知能だったことを忘れるぐらい彼女にある事を感じていた。

(一体どうしちまったって言うんだ……? まるで早雲ちゃんの方が勇斗より人間臭くなっちまっているじゃねえか……)


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