　とは言え、あの馬鹿力は人間の物ではない。かと言って既存のアンドロイドの物でもない。まるでそれを凌ぐ脅威と位置付けても良いほどの力を有していることは確かなのだ。

「ねえ、少佐。わたし、少佐が戦わなくたって代わりにわたしが戦います。それだけの自信があります。ほら、少佐が以前にレクチャーしてくれたじゃありませんか。道具は使いこなせて初めて戦略として成り立つって」

「あ、ああ……」

「だからわたし、分かっちゃったんです！」

「分かっちゃったって、何を？」

「何をって、もちろん今のユートさんの力量のことですよ。そう、ここまで言えば、少佐ならもうご理解いただけているでしょうけれど、ユートさんて、あんなファンタジーな力を手に入れても、それを戦略で使いこなせるだけの頭は持ってはいないじゃないですか。つまり……」

「あ、ああ……つまり」

「ええ、つまり、そういうことです、少佐。あの単純頭のユートさんのことだから、あのファンタジーな力を手に入れたことに満足しているだけで、戦略なんてからっきしなんです。言うなればマヌケもマヌケ。力ばっかりの頭空っぽだってことです」

　彼女は、事もなげにその言葉を言い切った。つい先日まで、付かず離れずの距離を保っていた彼氏彼女の間柄だったにもかかわらずに。

　正太郎は、そこで思わず唸り声を上げてしまった。当然、彼女の言葉の内容如何（ないよういかん）にではなく、

（やっぱ、早雲ちゃんはれっきとした女の子なんだな。ホント女って恐（こえ）えなあ……。これから俺も気を付けよう……）

　という部分に。

「それじゃ、行ってきますね」

　見た目に美少女である早雲は言うや、正太郎の傍を軽やかな足取りで離れると、そこに素手で見構えてみせた。どうやら彼女は本気で勇斗と格闘戦をやり合うらしい。

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