神々の旗印156

 羽根の生えた人類に生まれ変わった勇斗は、もう以前のような全ての物事にたじろぐような存在ではなくなった。それは、自らの強靭な肉体によって裏打ちされた自信によるものである。

「こんな開放感があるならば、俺は最初からこの力を入れるべきだった!!」

 勇斗は言うや、また十尺ほどもある大剣を軽々と大上段に持ち上げると、それをテニスのラケットでも振り回すかのようにしなやかに打ちおろした。

 すると今度は、空間が真っ二つに引き裂かれる様に真空の溝が出来る。その真空の溝が一瞬ずれたように見えたかと思うと、

「うわああっ!!」

 正太郎の右肩が鋭い刃物にでもえぐられたかのように鮮血が飛び散った!!

 さらに勇斗は大剣を真横に振り回すと、

「ぬううっ……!!」

 正太郎の鳩尾みぞおちの辺りがぱっくりと割れ、激しい鮮血のしぶきが舞い上がる!!

「どうだ、羽間少佐!! どんなに強くったって、生身の体のアンタにこんな芸当は出来ないだろう!? そうやってカッコつけて偉そうな御託を並べたって所詮それは傲慢な自己満足なんだ!! 女一人守ることが出来ない張りぼての理想なんだ!!」

「女一人守れないだと……!?」

 正太郎はその時、黒塚勇斗の視線の先を見逃さなかった。なんとその先には、赤い巨人の眉間にはりつけにされた女の姿があったのだ。

「そうだ、きっとアンタにもそういう苦い経験はあるんだろう? 少佐、俺はね。やっと巡り会えたんだよ! 探し求めていた恩人に! セシル曹長に!! だけどね、彼女はもうこの世の人じゃなかったんだ!! ここで彼女を見つけた時には、憎い機械神の亡霊にその心を奪われてしまった抜け殻だったんだよ!!」

「なんだと!?」

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