神々の旗印157


「俺はね、少佐。セシル曹長……いいや、セシルさんをおもちゃの様に思いのまま操って逃げた機械神の亡霊が憎い!! そして、その機械神打倒を掲げて戦争を仕掛けたのに、それをやり遂げなかったアンタが憎い!! アンタさえ前の戦争でしっかりしていれば、こんなことは起きなかったんだ!! アンタがこんな戦争さえ仕掛けなければ、こんな混沌とした世界は成立しなかったんだ!! 全ては機械神にけしかけて戦争を起こしたアンタのせいなんだ!! そうだアンタが全部悪いんだ!! 彼女を返せ!! 今すぐセシルさんを返せ!!」

 勇斗の口角から飛沫が溢れ、瞳から涙が滝のように流れ出して居た。

 確かにそれは矛盾である。彼の主張は矛盾だらけである。しかし、正太郎にはその勇斗の気持ちが痛いほど伝わっていた。自分の愛した者の死が、どれだけ人心を狂わせるのか。人の道を迷わせるのかということを……。

「勇斗、てめえ……」

 若気の至りであった。自分の愛する者の死が人の心を惑わせることは至極想像するに容易い。そして、その要因が自分に無かった時、少しでも関連性のある第三者を引き合いに出して罪を擦り付けてしまうことも容易に想像できる。

 正太郎とは考え方や筋道はかなり違えど、彼も一度辿って来た道だけに、このような愚かな勇斗に対してそれ以上の二の句が継げないのも無理もないことである。

「何とか言えよ、コノヤロー!! この人殺しめ!! アンタは卑怯だ!! アンタは世界の英雄気取りでいるだろうが、どこが英雄なんだ!? アンタは全然弱い者の味方なんかじゃないじゃないか!! 自分が強く生まれて来たことを誇示しているだけのとんだエゴイストだ!!」

 勇斗は言うや、またその右腕にしたためた大剣を大上段に振りかざした。

 正太郎は、あの攻撃が来る! と思った。あの攻撃を二度も三度もぶちかまされては、さすがの正太郎でも平気でいられるはずがない。

 彼はその状況をうかがうや、すかさず愛銃の銃口を勇斗の腕を目掛けて発射した。

 

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