神々の旗印149


「お、おい! 何好き勝手なこと言ってやがる!! イーアン!! マーキュリー!! 待て、そのカウントを即刻取りやめろ!!」

 正太郎は叫ぶが、人工知能マーキュリーはカウントダウンを止める素振りなど一向に見せない。

「おい烈!! 何こんな時に気を失っていやがるんだ!? テメエらお得意のインタラクティブコネクトを利用してマーキュリーの回路の中に早く介入するんだ!! おい烈!! 聞いてんのか!?」

 しかし烈太郎は、先ほどの機体のダメージによって一時的なオーバーロードダウンを起こしている。

「チッ、クソウ!! こんな時に……!!」

「悲しむこたあねえよ、焦るこたあねえよ。なあ、背骨折り……。これで俺は満足だ……。俺は俺の役割をやり切った……この俺の人生を全うすることが出来た……。後はアンタに託すぜ、ショウタロウ・ハザマ……ヴェルデムンドの背骨折りさんよ……」

 イーアンは、その血の滲んだごま塩髭を指で撫でると、得も言われぬ満足げな笑みを浮かべる。

「カウントダウン、21……20……19……18……17……、あと15秒少々で自爆スイッチがオンにナリマス。搭乗員の方ハ、速カニ退避シテクダサイ……」

「何!? 自爆スイッチだと!?」

「ああ、これでサヨナラだ、背骨折り……。心残りは、この自爆カウントダウンを入れると、この機体のサポート人工知能の心が失われちまう所だ……」

「しかし!! 今の時代、サポート人工知能の自殺機能は取り払われているはず!?」

「そうよ、だがこの機体は古い流れを汲む機体だ……。その心配には及ばねえ……」

「その通りデスワ、イーアン様。ワタクシの心は自爆カウントダウンを以てしても健在です。11……10……9……」

「イーアン!! マーキュリー!! 止めるんだ!! そんなカウントダウンなんか早く止めちまえよ!!」

 しかし、そんな正太郎の叫びも虚しく、人工知能マーキュリーの声は速やかに時を刻む。

 そして――

「4……3……2……1……」

 と、最後の音声が烈風七型のコックピットに木霊した時、

「さらばだ……背骨折――!!」

「御機嫌ヨウ……正太郎サ――!!」

 彼らの上部に巨大な閃光が走った!! フランキスカⅤ型は爆炎を上げて赤い巨人の左足を見事粉砕に成功したのだ。

「イ、イーアン!! マーキュリー!!」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る