神々の旗印137


「ば、馬鹿な!! こんな近くて遠い場所に、俺たちの故郷ふるさとがあったなんて!!」

 さすがの正太郎も額から脂汗が止まらなかった。

 なにせ、彼はあのヴェルデムンドの戦乱以降、今は無きヴェルデムンド新政府によって地球への渡航を制限されていたのだから。彼が少年時代まで育ったあの懐かしい光景が、一瞬でも肉眼で確認出来たことがより衝撃的だったのである。

「兄貴ぃ、ボーっとしないで!! 敵が……あの赤い怪獣がまだ攻めて来るよう!!」

 烈太郎の言う通り、赤いフェイズウォーカーはその破壊の手を止めようとはせず、まるで猛り狂ったヒグマののような動きで巨木で出来た森林を津波のように薙ぎ倒して行く。

「す、すまねえ、烈!! そ、それで、奴がマドセード達が居る地点に到達するまで、あと何十秒だ!?」

「このまま行けば、あと98秒!! 動きの取れないマド兄ぃ達じゃあ、この赤い怪獣の攻撃は絶対にけられない!!」

 正太郎はまだまだ気が動転して、今現在の状況を整理できないでいた。

 その上――、

「おい烈! もしも……もしもだぞ? もしも俺たちが、あの化け物をレールキャノンで狙撃したとして、それの破壊力が強すぎて貫通した場合、その弾丸は上空を突き抜けてどこまで到達する!?」

 その時、正太郎の脳裏には最悪の事態がぎっていた。

「え、あ……兄貴。それはいくら何でも考え過ぎだよ。角度や到達距離を考えても、もしあの空の上に街があったとしても被害なんて及ばないよ」

「そりゃそうなんだが……。どういうわけか胸騒ぎが治まらねえんだ」

「兄貴……」

 正太郎は、機体を右へ左へとジャンプさせながら落下する巨木伝いに姿勢制御を行う。

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