神々の旗印127
「な、なんだって? それどういうこと!?」
烈太郎が問い質した途端、百体以上あった赤いフェイズウォーカーの残骸が一様に寄り集まり、物理的思念となって異様なまでに巨大化して行く。
その様は、まるで憎しみと悲しが入り混じった鬼の形相そのものであり、機体の周りからはそれを見ただけで触れてはならない何かが怒涛の如く滲み出して居た。
その時である――
「お、おい、烈……」
「あ、兄貴!!」
今の今まで頭を抱え、苦痛の底に呻きもがいていた正太郎が声を掛けて来た。
「なあ烈……、俺に協力してくれねえか?」
「協力? 何水臭いこと言ってるんだよう! オイラと兄貴との間で協力だなんて今さら出し合う言葉じゃないよう!」
「そ、そうじゃねえんだ……烈。俺ァ、俺ァな、たった今、奴らと同じ立場に居たんだ。人の気持ちろくすっぽ何も察することも出来ねえ、言葉も上手く喋れねえ、そして器用に自分の思ったように立ち回れねえ奴らと同じ立場になっちまっていたんだ。だからこそやっとその気持ちがたった今分かった、だから奴らの気持ちが痛いほど分かっちまったというわけさ」
「そ、そうだったの!? それで兄貴は、あんなに苦しそうに……」
「ああ……。俺ァな、あんなひどく狭苦しい体験は生まれてこのかた一度もしたことがねえ。なあ、烈よ。奴らはな、俺の過去の記憶をお前に見せることによって、俺たちに自分の置かれた息苦しさを分かって欲しかったんだ。奴らは俺なんかとはまるで違い、言いたいことも言えなければ、他人の気持ち推し量る事にも長けちゃいねえ。そんな奴らにとって、この俺のような人間は羨望の対象でもあり、そして妬みや憎しみの対象でもあった。俺ァ、奴らがお前に見せた俺の過去の記憶を傍から見せられてそれをことごとく感じさせられた。あんな男のように自由に生きられれば、あんな男のように自分の主張を押し通してまで人助けが出来ればな、とな……」
「そうか。兄貴は兄貴でしかないから、いくら他人の気持ちを推し量ることに長けていたって、その人自身の感情にまで絶対に辿り着けないもんね。だって、兄貴にとってはそれが当たり前の世界なんだものね……」
「そういうことだ、烈……。言うなれば、奴らに何の罪もねえ。ただ、奴らは俺に私的な憎しみを抱いているだけだ。そこに善だとか悪だとか、そんな野暮ってえ概念などどこにもありゃしねえ。ただ、俺に対する底知れねえ怨み辛みがストレートに湧き出しているだけなんだ!」
「じゃ、じゃあ、これからどうするの? あんなでっかい憎しみを相手に!?」
「そりゃあ、決まってんだろ!!」
「決まってる?」
「ああ、奴らにどんな理由があろうと速攻で叩きのめすまでだ。この俺に全力で突っかかって来るってえなら、俺ァ全力で相手をしてやるまでよ!!」
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