神々の旗印126


 こういった考えの経緯から、自然派たる人々の殆どは、あの〝お迎え症候群〟なる過去の事象を恐れ、ヴェルデムンド新政府が掲げる〝全人類ヒューマンチューニング手術計画〟に徹底抗戦したというわけである。

 その後、ヴェルデムンド新政府は勝利を収めたものの、なぜかあれだけ前提として掲げていた〝全人類ヒューマンチューニング手術計画〟を白紙撤回し、反乱軍の意思を尊重した〝ヒューマンチューニング手術の自由選択権〟を認めてしまったのである。

「ナゼダ……。ナゼ、貴様ラ自然派ト言ウ連中ハ、ソコマデ傲慢ニ考エガ出来テイル……。我ラハ、タダ、誰モガ均等ニ幸セトイウモノヲ、享受シタイダケダッタノダ……。誰モガ、生マレモッテ獲得スル権利ヲ持ッタ愛情ヲ受ケ入レタカッタノダ。ソシテ、全人類ガ〝ミックス〟トナッタ暁ニハ、誰シモガ驚異的な知能ト感覚ヲ有シ、全テノ優劣モ争イモ排除サレタ世ノ中ニナッテイタハズダ!!」

 突如、赤いフェイズウォーカーの亡霊が烈太郎の目の前に現れ、過去の人類の足跡をリロードしていたビジョンが一気に現実世界の光景に切り替わった。

 しかし、烈太郎はそれに慌てることもなく、

「そんなこと……そんなことはオイラには難しくて良く分からないよ……。でも、でもね、キミたちは何か勘違いをしているんじゃないの? だって、キミたちは、キミたちの望む世界が来なかったことを嫉んでいるだけじゃないか! オイラや兄貴たちは、自分が自分の望む未来の為に自らが行動を起こしている! それに、兄貴たちは、自分の為に戦っていたんじゃない!! 人類の未来の為に戦っていたんだ! それに引き換えキミたちは、なんだかんだ言って自分のエゴが受け入れられないことを逆恨みしているだけじゃないか!!」

「クウッ……黙レ! 下等デ下劣ナル人工知能ノ分際デ!! 貴様ニハ、寿命ヲ持ッタ我々自然発生生物ノ気持チナド分カラヌ!! 我々、〝オ迎エ症候群〟ニヨッテ、命ヲ絶タレタ者タチノ気持チナドハナ!!」



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