神々の旗印118


 烈太郎が困惑した様子で正太郎を見つめていると、

「コレガ、ワタシタチノ怨ミ……。我々、しいたゲラレテキタ者タチノ思イ……」

 コックピット内に、突如感情の起伏を感じさせない冷たい言葉が走った。

「な、何? 誰なの? 誰の声なの?」

 烈太郎は、ミニチュアアバターで辺りを振り返り言葉の発信源を探る。

 すると、その声は次第に輪郭を帯び、

「我々ノ望ミ……。ソレハ世界ノ大終末。ソシテ、秀デタル者タチノ完全駆逐……」

 それははっきりと誰もが聞き取れるほどの音量で主張し始めた。

「い、一体何を言っているの? 終末だとか完全駆逐だとか……。一体キミは誰なの!?」

「我々ハ、ソノ男ニ怨ミヲ持ツ者……。ソシテ、ソノ男ノヨウニ恵マレテ生マレ出テ来タ者タチヲ、完全滅殺ヲ望ム者……」

「め、滅殺だってえ!? も、もしかして、キミは兄貴が憎いの?」

「ソウダ……。我々ハ、ソノ男ノ、類稀たぐいまれナ能力ガ、トテモ恨メシイ。トテモねたマシイ。トテモ憎マシイ……。我々ハ、ソノ男ノチカラニヨッテ人生ヲ翻弄サレ、何ラカノ形デ散ッテイッタノダ……。ソノ男サエ、イナケレバ……。ソノ男サエ、コノ世界ニ現レナケレバ。我々ハ、沢山ノシアワセヲ、コノ世界デ享受スルコトガ出来タノダ。沢山ノ愛情ヲ受ケルコトガ出来タノダ……」

「何なのそれ? わけが分からないよ! キミの……いや、キミたちの言っていることの意味がまるで分からないよ!」

「機械ノオマエニ、何ガワカル……。生マレモッテ秀デタルチカラヲ持タヌ我ラノ苦シミヲ、機械ノオマエニ何ガ理解デキル……。愛サレヌ運命ヲ背負ッタ我々ノ心ヲ、ドウ理解出来ル……?」

「確かにオイラは機械だよ。人の手で作り出された人工知能だよ。でもだからって、兄貴みたいな人をよってたかって恨むなんて、そんなの逆恨みののものじゃないか!! 機械のオイラにだって、そのぐらいのことは分かるよ!」

「ソウデハナイ……。コノ男ハ、我々ノ心モ理解セズニ、アノ戦乱ノ当事者ノ一人トナッタ……。恵マレヌ我々ノ状況モ理解セズニ、オノレノ主張ヲ、貫キ通ソウトシタ……。ソレハ、恵マレテ生マレ出テ来タ者特有ノ、エゴダ……。生マレナガラニ勝利ヲ確信シタ者特有ノ驕リソノモノダ……!!」

「それは違う! それは違うよ!! 兄貴は、五年前にそんなつもりで戦っていたわけじゃない! いいかい? 兄貴はね、世界中のどんな人でも、どんな理由で生まれ出てきた人でも、誰もが自分の意思でヒューマンチューニング手術を受けるか受けないかを選択できる世の中を望んで戦ったんだ!! ただ誰かの意思に言われるがままの隷属的な世界にしたくないためにね!!」

「ダカラ! ソレガ、我々ニハ、トテモ邪魔ダッタノダ!! トテモソレガ嫌ダッタノダ……。アノママ、世界ガ、ヒューマンチューニング手術ヲ受ケ入レル、世ノ中ダッタラ、ヨカッタノダ!! アノママ、世界ガ、機械神ニヨル、統治ノ楽園ガ訪レレバ、ヨカッタノダ!!」


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