神々の旗印114


 烈太郎が叫ぶや否や、彼らの目前に今まさに空間の亀裂が生み出されようとしていた。

 それは余りにもひっきりなしであったために、この密林自体がまるで真昼間の海岸であるかのように眩いばかりの閃光で満たされていた。

「クソッ、そう来たか! おい烈。奴らはあのままでは敵わないと察して、数で攻めて来るつもりだ!」

「数で!? だって、今までだってそうだったじゃない?」

「それは違う! こいつらは知恵を使ったんだ。残った実体の部分を百か所以上に分けて、それでいっぺんに仕掛けて来るつもりだ!」

「そうか! そいうことは、オイラたちの目にはざっと百七の赤いフェイズウォーカーが攻めて来るように見えるんだね!? でも、そんなに小さな実体じゃあ、攻撃なんてやって来られるものかい、兄貴ぃ?」

「さあな。それだって敵さんの勝算あっての物種だろう。少なくとも奴は俺たちの機体を取り囲むことから始めるはずだ。いいか烈! 奴の実体のねえ迫力に気圧けおされるんじゃねえぞ!」

「アイアイサーだよ、兄貴! オイラ、サーモセンサーを使って相手の実体部分を特定する役をやるよ」

「ああ、分かった。じゃあ、お前はそれを逐一俺に伝えてくれ! どんなに数珠つなぎに言葉を連ねてくれたって構わねえ。お前の認識できたペースで言ってくれ! 俺は出来るだけお前の演算能力に付いて行く!!」

「了解したよ、兄貴! 兄貴だったら出来るよ。だって兄貴には不可能はないもんね!」

「ああ、そういうことだ!」

 こういった場合、戦闘マシンのサポート人工知能との連携は、人体に改造を施したミックスたる存在の方が有利である。それは、人間と人工知能の感覚を直接繋ぐことの出来るインタラクティブコネクト技術が可能であるからだ。

 しかし、ネイチャーたる羽間正太郎ではそうか行かない。彼らは逐一烈太郎が放った言葉を受け、それを理解しながら対処しなければならないのだ。

 そのタイムラグはざっと一秒ないし二秒。もしかすると一秒にも満たない場合もあるやもしれない。だが、この生き残りを賭けた場面に於いては、そんなわずかな間合いであっても命取りなのである。

「出て来たね、兄貴。やっぱり兄貴の言った通り、みんなあの赤いフェイズウォーカーだ……」

「ああ、こりゃあ壮観だな。やっぱり見た目だけでも圧倒されちまうぜ……」

「これがアイツらの……いや、アイツの狙いなんだね?」

「そういうことだ。さあ、烈! いつも以上に気合入れていくぞ!!」

「アイアイサー!!」


 


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