神々の旗印107


 敵側が、こういった事態を恐れていることは確かだった。だが、なぜ彼らにこんな前代未聞の技術を使用してまで奇襲を仕掛けてきたのかは分からない。そして、

「あ、兄貴!! 敵の倒し方を導き出したのはいいけど、敵の数がまだまだ収まらないよう! オイラたちの機体の残弾数だってままならないけど、あの三人の機体がいつまで持ちこたえられるものか……」

 烈太郎の先ほどの予測では五分が限界だと言った。しかし、現状を鑑みれば三分とは持つまい。

「おい烈!! テメエに新しい指示を与える。お前はあの赤い奴が今どこに居るのか演算予測しろ!!」

 正太郎はここに来るまで散々敵の機体を倒しに倒しまくってはいるが、そこに重厚な手ごたえはなかった。つまり、彼の異名ともなっている〝背骨折り〟の感触が伝わってこないのだ。

「うん、了解したよ。あの赤いフェイズウォーカー限定で出現予測するんだね! でもさ、兄貴。どうしてアイツらから一億人の意識が感じられたりするんだろうね?」

「ああん? そりゃあおめえ、一億人がそこに居りゃあ、ざっと考えても一億通り以上の考え方が生まれ出るからだろ? その一億以上の意識を複雑に組み合わせれば、そりゃあもっと天文学的な桁違いの考え方の道筋が出来上がるってのが寸法だからさ」

「ふうん、そうかなあ。オイラ、何か腑に落ちないんだ。確かに兄貴の言っていることはとても良く分かるんだけど、もし、そんな意識の塊がアイツらの機体の中に一つ一つ入っていること自体がさっぱり分からないんだよ。だって、どう考えたって、今のアイツらよりも兄貴一人の戦闘能力の方が優れているのは確かなんだからね」

 烈太郎の言うことはもっともであった。確かに今現在の状況は小隊として追い詰められている状態だが、一個人の能力としては正太郎の能力の方が上回っていることは確かだ。これがもし、小隊の他の三人だったとしても同じことが言える。

 敵は、数と奇妙極まりない技術の奇襲によって彼らを翻弄していただけで、これと言って戦闘能力に長けているわけでもなければ、戦略的に秀でているわけでもないのだ。

「じゃあ、お前はどう思うんだ、烈? 何でコイツらはこんな奇襲を仕掛けてきたんだと思う?」

「ねえ兄貴? 兄貴は多分答えが分かっていて、そうオイラに質問してるんでしょ? きっと兄貴のことだから、もうとっくの昔にその答えが出ていてオイラに問い掛けて来ているんだよね?」

「え? まあな……。お前も随分賢くなって来やがったな。まあ、つまりだな……。今のが俺の導き出した答えだ」

「やっぱり、やっぱりそうなんだね。オイラも兄貴と同じように、さっきからそれを感じてた。つまりこの戦闘の意味するものは……」

「ああ、ただの奇襲じゃねえ。コイツらのケーススタディを溜め込むための予行演習みてえなものさ」



 

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