神々の旗印108
烈太郎は、正太郎のその言葉に背筋に冷たいものが走る感覚を覚えた。いや、彼は人工知能なので実際にはそんな感覚を覚えるような事はないのだが、こうやって長い間に正太郎と経験を培ってきたことに因って、そういった人間味に溢れたような感覚を無意識に習得してしまっていたのだ。
「なあ、烈。お前も気付いているのかもしれねえが、戦闘マシンタイプの人工知能としてのお前の成長は最早規格外だ。そして、あの早雲ちゃんにしたってそれが言える。いや、この小隊に集結した戦闘マシンの人工知能全てに同じことが言える」
「うん、兄貴の言うことはとても分かるよ。だってこの間、沢山の人工知能とお友達になったけど、とても同じ生き物と話している感じじゃなかったもの。何だかそこに集まった戦闘マシンのみんなが、規格の中に詰め込まれた製品みたいに感じちゃってた……。でも、ここの小隊に居る戦闘マシンの人工知能の仲間にはそれを感じないんだ」
「ああ、その感じ方は人間でも同じさ。どんなに優秀に生まれ出てきた人間だって、それなりの経験を積んで来なければみんな規格内の製品にしかならねえのと同じさ。つまりだな、奴らは最初から俺たちの記憶や対処力といったケーススタディを自らの機体に仕込んだ中の人間たちに取り込もうってな魂胆だったんだ」
正太郎は、先だってのブラフマデージャの地下洞窟で見た光の球を思い出していた。
あの時、始祖ペルゼデールの手先となっていたエナ・リックバルトは言っていた。
「あの光の球の中には別の宇宙が仕込んである」
と。
正太郎はその言葉の記憶から、きっとあの機体の中にはそういった別の宇宙から培養された人類が仕込まれているのだと
彼は、首から下げた銀色に輝く真球を握りしめながら、
「なあ烈。お前、アイシャに会いたくはねえか?」
「な、何言っているの、兄貴!? だって、アイ姉ちゃんはもうとっくの昔に……」
「そうさ、あの聡明で美しい娘だったアイシャはもうこの世界にはいねえ。だがよ、もしかすると……」
「もしかすると……?」
「あの敵さんのどれかの一つに居るのかもしれねえってことだよ」
「ええっ! 何だって!?」
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