神々の旗印104

 

 正太郎は、それがさも当然のように言い切った。今はそれが事実であろうがなかろうがそんなことは二の次なのだ。この一瞬のかけ引きと読み合いこそが相手との雌雄を決するのだ。

「おい烈!! 各機のサポート人工知能に、各パイロットのメンタルサポートを重点的に行うように通達しろ。それが終わったらお前は、この俺とあの赤い奴と一騎打ちに移行する!」

「アイアイサーだよ、兄貴! オイラ、兄貴の読みを信じるよ。オイラはいつだって兄貴のその読みに助けられて生き残って来られたんだ!」

「ああ、こういった追い詰められた時こそ、根拠を求めるより根拠のねえ自分の勘てえのが物を言うんだ。お前ら根っからの機械には分からねえだろうが、俺たち人間なんてぶっちゃけそんなものさ!」

 特にこういった場面では、技術うんぬん能力うんぬんなどを問うている場合ではない。究極は、絶対に生き残るという執念が必ず結果を残す。そしてその結果の積み重ねが根拠となり、次第に自信に繋がって行くものなのだ。少なくとも、彼はそうやって弱肉強食たるこの世界を生き残って来たのだ!

 同時に、正太郎は相手側にひどく焦りに似たような意識を感じ取っていた。そして、自分たちが追い詰められている反面、相手側にもひどく追い詰められた意識を感じ取っていた。このように前代未聞の未知の力を利用した攻撃を仕掛けられてきたにもかかわらず、ひどく心許こころもとない不安定さを戦略からうかがい取っていたのだ。

 なぜなら相手側は、どうしても彼らを目的地の洞窟へ近づけさせたくないために、このような派手な攻撃を仕掛けて来たのだと読んでいたからだ。そう考えなければ、いきなり今まで見たこともない未知のカードを切ってくるはずがない。つまり、この凄まじい攻撃を仕掛けて来た事実こそが、彼らに対する最大の心の表れである可能性が高いのだ。

「いいか!? マドセード、エセンシス、早雲ちゃん! お前ら三人は、そこにある一番太い大木に背中合わせになってともえの陣形を作れ! そして攻めて来る敵を各自が三方を分担して迎撃するんだ!! 今のお前らの状態でもそれなら出来るはずだ!!」 

「りょ、了解したでゲス。背骨折り!! それならいきなり次元の裂け目が出来たとしても相手はいきなり攻撃を仕掛けて来られねえってわけでゲスな。それじゃあ、エセンシス、早雲ちゃん! 各自あの一番ぶっとい木を囲んで迎撃に備えるでゲス!!」

「了解しただすです、兄ちゃん!! オラはまだ足が使えるから、あの木の奥に回るだすです!!」

「それならわたしは、背中のスラスターだけで移動できる手前をやってみます!!」

「それでいいでゲス、早雲ちゃん! いいでゲスか? 各自、一、二の三で一気に散開するでゲスよ!! それ、一、二の三!!」

 三機は、マドセードの号令と共にできる限りのスラスター噴出を利用して目標の大木へと向かった。もう機動力を生かした戦闘が出来ない彼らにとって、この巴の陣形は最後の命綱となる。

 そして、

「いいか、お前らは各自の迎撃に集中な!! 三方どの機体がやられても命取りになるんだからな、お互いに気を引き締めて行くんだぜ! 俺ァ、その間にあの赤い奴と決着をつけて来るからな!!」

「すまねえでゲス、背骨折り!! 期待して待ってるでゲス!!」

「背骨折りさん一人に、あんな化け物を押し付けてしまって心苦しいだすです!!」

「少佐、御武運を!!」

「応!!」


 

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