神々の旗印59


「そうだ、フェイズ2だ。早速だが勇斗。その機体から降りろ。そして、コイツを手にしろ」

 そう言って正太郎が差し出して来たのは、一本のレーザーソードだった。

「は、羽間少佐! お、俺……前の訓練で白兵戦は……!!」

「は? 白兵戦が何だってんだい?」

「い、いや、その……。俺、白兵戦なんて、そんな物騒な戦闘はやったことないもので……」

「な、なんだと!? 冗談はよしてくれよ、黒塚二等兵!? い、いや、正式な登録名はジェリー・アトキンス二等兵(仮)にしておいたんだが……。いやまあ、そんな余談はおいといてだな……。それにしてもお前、そのセシル・セウウェル曹長と、先代のジェリーには白兵戦の特訓は受けて来なかったのか?」

「え、ええ、まあ……。どっちの時も、行き当たりばったりで兵士になったものですから……」

「はあ? ……なんともまあ、よくもそれでペルゼデールクロスの隊長の役を任されていたものだな」

「は、はあ……。流され易い性格なんですかね。俺って……」

 勇斗は、後頭部に手を当てながら、えへらえへらと乾いた苦笑いをする。

 正太郎は、そんな勇斗の態度に半ば呆れ返りながら、

「つうか、お前さあ。それならそうと、最初っから何でそれをこの俺に言ってくれねえんだよ。あれだけ戦闘マシンを操るセンスがあるんだから、てっきり白兵戦もある程度は出来るのかと思っていたぜ。……とは言え、まあ、これで俺は納得出来たってなもんだ。お前が、その操縦センスをコンスタントに活かし切れねえ理由がな」

「り、理由ですか……?」

「ああ、そうだ。その答えが、今からやる訓練のフェイズ2の中に隠れている」

「これからやる訓練の中に……?」



 正太郎は先ず、勇斗にレーザーソードを持たせ、出力を全開にさせた上でこちら側に向いて身構えさせた。

「いいか、勇斗。今からこの俺が、ランダムにこの缶詰の空き缶をお前の方に投げ出す。そしたらお前は、漏れなくそれを一気に切り落として見せろ」

「ぜ、全部ですか?」

「ああ、全部だ。そして良いと言われるまでずっとだ。別に全部切り落とせなかったからって、罰ゲームで腕立て伏せを延々とやらせるつもりはねえ。安心しろ」

「ははは……それなら何とか大丈夫かな」

「いいか? その代わり、死ぬ気でみんな切り落とすんだ。この缶カラが、味方を守るための銃弾の雨あられだと思ってな」

「は、はいっ!!」

 勇斗は冷や汗をこめかみに蓄えつつも、真剣な表情になって身構える。

「ならば行くぞ!!」

 正太郎は、あらかじめ大きな籠の中に集めておいた軍事キャンプ内で廃棄された空き缶を手に取り、それを引っ切り無しのタイミングで勇斗に投げつけた。


 

 




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る