神々の旗印60


 勇斗はそれに対し、レーザーソードを思いっきり縦横無尽に振り回して見せる。すると、投げつけられた空き缶は、引っ切り無しに地面に切り落とされてゆく。

 レーザーソードという物は、重い金属で出来た実剣より滅法軽いが、その反面レーザーの出力している場所に触れてしまえば、自らに大火傷や裂傷といった重度の過失を負ってしまう危険性がある。武器としての有用性や殺傷能力性が比較的高いことは間違いないが、一つ使い方を間違えば、自分すらも傷つけ兼ねない恐れがある。

「ほら、どうした勇斗!! 腕が下がって来ているぞ!! 体の上半分の打ち漏らしが多くなってきている!!」

「は、はいっ……しかし、もう腕が……痺れて!!」

「馬鹿言ってんじゃねえ! これが戦場だったら、テメエの後ろに居る仲間がその弾丸の餌食になっちまっているはずだ!! 言いわけは無用!!」

 正太郎は、彼が弱音を吐いた時点で、さらに多くの空き缶を投げつけた。勇斗はまたもや力を振り絞ってより速くレーザーソードを振り回す。

「ほら、どうしたどうした!! どんどん的に当たらなくなってきているぞ!! そんなこっちゃ、お前は誰も守れねえまま朽ち果てて行くだけだ!!」

 勇斗は、正太郎がいちいち投げる空き缶のタイミングをずらしていることに苛立ちを覚えながらも、何とか食らいつこうと必死になっていた。

 しかし、時間が経つにつれ、レーザーソードの矛先が空き缶の角の部分に当たるどころか、かすりさえもしなくなっていた。

 その様子を見た正太郎は、

「よし、いいだろう! じゃあ第一弾は終了だ。ここで一旦休め」

「は、は……いぃぃ……」

 勇斗はヒイヒイと息せき切って、その場所にがっくりと膝をつく。そして、

「しょ、少佐……。こ、これは、何のための特訓なのですか……?」

「ああこれか? これはな、お前がいかに無駄な動きをしているのか知るための特訓だ」

「え? 無駄な動き? それはどういう……?」

「今の言葉通り、お前がいかに無駄な動きをしているか知るための特訓だよ。まあ、論より証拠だ。この俺がお前との違いを見せてやるから、お前がこの俺にこの缶カラを投げつけてみろよ。とは言っても、今のハアハア言ったお前のその様子じゃあ、ダメだろうから……」

 正太郎はそう言いつつ、辺りをキョロキョロと辺りを見回すと、

「ああ、そうだな。お前の腕があればフェイズワーカーでこの缶カラを投げつけられるだろ? それ、やってみてくれ」

「え? ええ……ええええっ!? この空き缶をフェイズワーカーでですか? そんな無茶苦茶なあ!!」

「何でえ、そんなのも出来ねえってのかい?」

「い、いや……そりゃ、そのぐらいのことは、この俺にだって出来ますけど……。でも、そんなんじゃ少佐のお身体が……。だって、フェイズワーカーを使ったら、人間が投げつけるスピードもパワーも段違いなんですよ!?」

「いいんだよ、んなこたあ。さあ、見本を見せてやるから、四の五の言ってねえでやってみろよ」



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