神々の旗印51
しかし指令が下った以上、その命令に背くことは出来ない。それが軍という組織の構造であり、いかにもありがちなトップダウンの意思決定こそが軍属の最大定義なのだ。
(俺ァ、今までが自由過ぎた。恵まれ過ぎていたんだ。軍属なんてこんなものさ。それを覚悟でここに身を置くことを決めたんだ。俺たちの明日を生き残る為に、な……)
正太郎は、早速指令の内容を確認し、作戦の立案に当たった。作戦行動開始まで残された時間はあと二日。48時間以内である。その時間内に、全ての作戦構成と、軍事訓練を済まさなければならない。
先ずは、作戦本部との連携を図るための打ち合わせをしなければならなかった。
作戦会議本部に在籍する面々は、表面上は正太郎に好意的に見えた。が、本当のところ、彼らの腹の底にある物の所在は見当もつかない。あのウォーレン・剣崎とかいう傲慢な態度を取る大佐の方が、今になって分かり易くて親切に見えて来るほどである。
(まあ、しかし、やるしかあるめえよ。ここで俺が実績を重ねれば、こいつらだって四の五の言っているのが馬鹿らしくならあな。て言うかその前に、こいつらはこの追い詰められた状況を本当にどう思っていることやら……)
あの凶獣ヴェロンら肉食植物の総攻撃もそうだが、先日の謎のフェイズウォーカーの襲撃騒動も冷めやらぬときに、自己顕示欲の塊のような闘争が蔓延している自体が、正太郎にはとても理解不可能なのである。
時に七尾大尉は、他の整備兵数人と軍事調査員、研究員を連れて、あの朱塗りのフェイズウォーカーの分解作業に当たっていた。
「ではここいらで、あんさん方、調査の方々たちにこの機体の調べを任してしまうでな。何かありましたら、無線で私を呼んでくだされ。私の方は、まだまだ動けるフェイズウォーカーの点検やらが山ほど残っておりますで」
七尾大尉はそう言って、四名からなる調査班を残しその場を去って行った。
その四人の調査員たちは、七尾大尉らの整備班によって細かく分解された朱塗りのフェイズウォーカーの部品を手に取りつつ、一つ一つ画像を取り込んでは、それを端末に掛けて分析を行う。
「何か変わったところはあるか?」
「いいや、これと言ってさほど……。強いて言うならば、この趣味の悪い赤い色に全身を塗られたところぐらいかな。種別機体の専門はどうだ?」
「ふうむ、そうさな。こっちもこれと言って目立ったところはない。ベースの機体は、今でも現役バリバリの
「とはいっても……なんだ?」
「うむ。とは言ってもだな。論より証拠に、この端末に取り込んだ総合データを見て欲しい」
一人の調査員は、機体の画像データを基に数値化されたデータを他の三人に見せた。すると、
「な、なんだこれは!?
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