神々の旗印㊳
フェイズウォーカーという乗り物は、ただ単なる殺戮用の戦闘マシンではない。このヴェルデムンドという地球とは環境が異なる大地に適応するために開発された人類にとっての素晴らしい相棒として作られた生活システムなのだ。それだけに、彼らには大きく分けて戦闘モードと生活モードの切り替えという機能が必然と備わっている。
「クッ……!! ここでテメエのことをどうのこうのと責めている暇なんかねえ。じゃあ、どこのどの部品を取り換えればいいんだ!? それを教えろ!!」
「う、うん……兄貴、ごめんよう。ちょっと待って……。そう、やっぱりそうだ。オイラの中枢回路の端っこの方にあるコンダクター回路が、オーバーロードで焼き切れているよ」
「じゃあ、それを取り換えればいいんだな? その回路の予備はあったか?」
「それが、そんなに交換の必要のない物だから、予備は買ってない……」
「なんだと!?」
正太郎は思わず怒号にも似た言葉を吐くと、激しくコックピットのコンソールパネルを叩く。これは烈太郎へ叱責から来るものではない。自分の認識の甘さへの怒りだ。そこへ、
「どうしなすった、少佐殿? 何かお困りですかえ?」
地上から七尾大尉の大声が飛んで来る。
正太郎は、そこでハッとし、
「え、ええ! 大尉!! 頼みがあります! 第五世代フェイズウォーカーの人工知能コンダクター回路用のE-7081規格以上で造られた基盤はここにありませんか!?」
言われて、大尉は少し首を傾げ、間を置いたのち、
「あ、ああ、ありますともさ。何せここは、最新式のクイーン・オウルの整備も任されておりますでな。E-9031規格で宜しければ、グロス単位で在庫が残っとるはずですわい!」
「なら、それを至急頂けませんか? コイツの戦闘モード切り替えが不具合を起こしちまって!!」
「それは大変だ!! 了解した!! 今すぐ整備アンドロイドにここまで取って来させます!!」
「お願いします!!」
そんなやり取りをしている最中でも、イーアンの機体は朱塗りのフェイズウォーカーをギリギリの位置で抑え込んでいた。
もし、彼の機体がここで
「早く……!! 早く新しい回路を持ってきてくれ!!」
正太郎は今にも自分の身体一つでイーアンの居る場所に駆け出したい一心だった。
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