神々の旗印㊲


「チッ、何をしてるんだあの野郎!! ジェリーもどきのあんにゃろう!!」

 それを見ていた正太郎は、一旦乱射が治まったことを確認して、

「大尉、七尾大尉! 大丈夫か!?」

 と、咄嗟に烈太郎の背後に身を押し込めた好好爺こうこうやの状態を気遣う。

「え、ええ……、お蔭さんで。少佐殿、アンタさんは?」

「あ、ああ、俺ァどうってことないですよ、大尉。それよりも、イーアンの加勢に行かなくては!! おい、烈! 速攻で戦闘準備だ!!」

「ア、アイアイサーだよ、兄貴!!」

 正太郎は、烈太郎の機体を見上げると、いつものように息の合った連携でひょひょいと烈太郎の手のひらを蹴り上げながら背部のコックピットに辿り着く。

 彼はこの機に乗じて、あの猛り狂った朱塗りのフェイズウォーカーに対峙しなければならなかった。なにせ、この訓練場にはまともに動ける兵士はおろか、フェイズウォーカーすら一台もスタンバっていない。まともにあの化け物と戦えるのは彼しかいないのだ。しかし――

「どうした、烈!? 速攻で戦闘モードだ。全速でイーアンの所に向かえ!!」

 正太郎は言うが、一向に烈太郎が応答しない。

「な……!? どうしたんだ、烈!? 冗談やってる暇なんてねえんだぞ!!」

 正太郎の珍しく焦りと怒号が入り混じった声がコックピット内に木霊こだまする。すると、

「そ、それが、兄貴ぃ……。オイラ、戦闘モードに切り替わらなくなっちゃったみたい……」

 と、烈太郎が情けない声で答えて来る。

「な、なんだと!? おい、そりゃどういうことだ!?」

「た、多分……。この間のヴェロンと戦闘で、回路のコンダクター部分が接触不良を起こしちゃったみたいなんだ」

「な、何ィ……!?」

 確かにこの間の戦闘は、稀に見る凄まじい戦闘の連続であった。その上、ヴェロンの指令系を正確射撃などで狙い付ける役目を行ったが故に、烈太郎の思考神経系を司るコンダクター回路には多大な負荷が生じていたのだ。それが今になって接触不良を起こしてしまったのだ。

「だ、だからあれほど、お前のメンテナンスには手が掛かると言ったんだ……!! く、くそう、こんな時に……!!」

「ご、ごめんよう、兄貴ぃ。でもオイラ、戦闘モードに切り替わらないと、武器も使えないし、戦闘用の高速走行だって出来やしないんだよう……」

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