神々の旗印㉓


 正太郎はそれを聞いて、咄嗟に背伸びをした。彼とて決して身長が低いわけではない。が、この血気盛んな猛者軍人の人だかりでは、まるで野良猫がススキの中に身を潜めているかのよう。言わば、彼の背丈を頭一つ二つ抜きんでている大男大女ばかりが群れを成していて、到底向こう側を覗けるものではない。

「チッ、何が起こってるのか全く見えねえな……」

 その騒ぎの中心を窺おうとしても、大勢の歓声のお陰で何が起こっているのかさえ見当もつかない。

「ホッホッホ、流石の少佐殿でもこればかりはどうにもなりませんかな。ここに集まった勇猛果敢な猛者どもは伊達ではありませんでな」

「ああ、それは分かっちゃいるが、アンタの言う通り、この騒ぎが俺の仲間が原因だとしたら、それが何かを早く知らなきゃいけねえってもんだ」

「なあに、心配は無用でございますよ。ちょっとしたレクリエーションでございます」

「レクリエーション?」

「ええ、しかし、ちとその内容が物珍しいもので、ここにいるパイロット連中の目を惹いた次第です」

「な、何ですって? それはどういう……」

 正太郎は致し方なくなって、軽く指笛を鳴らすと烈太郎を呼んだ。

「おい、烈。お前、ここにいる連中の邪魔にならねえように、この俺を持ち上げてくれ」

「あ、兄貴。あの騒ぎの中を見るんだね? 流石にこのオイラでも、これだけ人が集まってちゃ、中で何をやってるか全然分からないや」

「だから俺をその腕で目一杯持ち上げて展望台になれって言ってんだ」

「うーん、それじゃあ、オイラには中が見えないよう」

「いいんだよ、お前が直接見えなくたって。っていうか、お前は三次元ネットワークに繋がるんだから、どっかの誰かが現状を配信しているかもしれねえのを探せってんだ!」

「あ、そうだった! そうだよね、兄貴。オイラ、そういう事が出来るんだった!!」

「アホか、テメエは!?」

 烈太郎は、自分のミニチュアアバターをせり出させて、愛らしくペロッと舌を出して見せる。そして彼は、彼の本体で正太郎の体を軽々しく持ち上げると、

「どう? 兄貴。どんな様子?」

 と空々しく聞く。

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