神々の旗印㉑


 そんな折、整備中のフェイズウォーカーが立ち並ぶ軍事キャンプ内を、

「んったく、テメエって奴はよう! まったくしょうのねえやつだ! 何、こんな大事な時にあんなキャンプの端っこの方で油売っていやがったんだ!!」

 と、羽間正太郎がドスの利いた大きな声でのっしのっしとまかり通って来る。

 そして、その後ろから背筋を折り曲げた黒い機体がトボトボと後を付いて来る。無論、その黒い機体とは烈風七型――烈太郎である。

「あ、兄貴ぃ、ごめんよう。オイラ、兄貴に他のフェイズウォーカーのお友達と仲良くなって来いって言われたから、ずっと三次元ネットの戦略ゲームに夢中になっちゃったんだよう」

「だからって、丸一晩中行方知れずになってゲームにうつつを抜かしてる馬鹿がどこにいやがるんだ!? こちとら、正規軍のお偉方との打ち合わせやら何やらで寝る間もないほどてんやわんやだってのによ! お陰で、テメエの細かいところのメンテナンスもまだ終わっちゃいねえだろうが! テメエの体は、他の機体と違って機構自体が特別なんだ。普通の整備技師がやるメンテとは話が違うんだからな。そこんところ、よく考えろ!」

「ご、ごめんよう兄貴ぃ。でもさあ、今三次元ネットワークで流行ってる戦略ゲームってのがさあ、〝熱き炎のヴェルデムンド戦記〟って言って、あの五年前の戦略のシミュレーションゲームなんだよう」

「なんだそりゃ?」

「何だもかんだも無いよ、兄貴。この戦略ゲームは、あの実際にあった戦乱の事象を基にして制作されているから、登場人物も本当にいた人がモデルになって登場する仕様になっているんだよ。勿論、兄貴と瓜二つのキャラクターも出てきているんだよ」

「なぬっ? そりゃ何だか気味が悪りぃな」

「そうかなあ、だからオイラ、とってもそのゲームが気に入っちゃって。そんなんだからさあ、色々と仲良くなったお友達に質問攻めにあっちゃってさ。兄貴のことやオイラのことのリアルな話をしながらシミュレーションしてたら、何だか楽しくなり過ぎちゃって……」

「それで時間を忘れてゲーム三昧ってか? こりゃ呆れたもんだわ」

「だって、特にあのゲッスンの谷の攻略戦に至っては、兄貴しかしらない情報をオイラは知っているだろ? それがみんな興味津々に聞いてくれるから……」

「お、おい、烈。テメエ、そんな話、あんまり他の奴には軽々しく喋んなよ」

「どうして、兄貴ぃ?」

「当たり前じゃねえか! そういう話は元々機密情報なんだよ! ただでさえ虹色の人類とかいう変な奴らにしつこく絡まれているんだ。他の奴らと仲良くするのは一向に構わねえが、金輪際、機密が漏れるような話は控えるんだ! 分かったな!」

「う、うん……」

 そんなやり取りをしていると、フェイズウォーカー格納エリアの一部が騒然としていた。

 正太郎と烈太郎が、そのエリアに近づくと、パイロットや整備技師たちの人だかりが出来ていた。

「お、おい。こりゃ、何の騒ぎだ?」


 

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