虹色の人類115


「まったくその通りだよ、鳴子沢大膳。私は、その嘘と言う概念と機能を、貴様たち第六世代人類から会得することに因って、強烈な個性を単独でこの手に収めることが出来るようになる。その暁には、私は五次元人としての進化を遂げると同時に、我々同士の中での王となることも可能になるのだ」

「な、なんと!? き、貴様! そんな野望を!?」

「ふふっ、では聞くが、野望を持つことの何が悪い? 私はこの数百億年もの間、幾度も幾度もかりそめの人類の栄華と衰退を見続けてきた。そして、その中での生きとし生ける者たちの躍動に心打たれたのだ。それは、分裂を起こして延々と生き永らえる我々には皆無と言ってよい程の感動があった。快楽もあった。それは、制限がある世界に住む者だけが得られる儚き概念なのだ。そこに私は魅入られた。そこに私は吸い寄せられた。強烈な個性こそが、それらの人類を進化に導く道しるべとなるのだからな!!」

「な、なんと!? 我々人類などは、その逆に永遠の命に魅入られもするというのに。貴様ら五次元人という輩は、そんなことに力を費やすとな……?」

「所詮は互いに無い物ねだりの世界だと言うことよのう。第六世代人類、鳴子沢大膳よ。しかし、我とて、この気の遠くなるような長い年月を経て、この研究経過に辿り着いた、結論を導き出したのだ。とりもなおさず、そこで私は第六世代人類の特性を手に入れ、貴様ら人類に代表されるあの男のバイタリティを複製することで全てが完結される。そして私は、五次元人の初代の王となり我々人類の進化に邁進することになるのだ!」

 玉虫色の男は声も高らかに全てを言い切る。どうやら彼の言葉には迷いがない。それもそのはずで、彼は五次元人である。性質上、偽りの概念を抱けないのだ。

「ふ、ふうむ……。貴様にそんな考えがあったのか。私には到底及びもつかんものだな……」

「何を言う、鳴子沢大膳よ。貴様はもう私の一部なのだ。これからは貴様にも存分に働いてもらわねば困る。なにせ、今現在においても、新たな反勢力が生み出されてしまったからにはな!」

「な、何ィ! 反勢力だと!?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る