虹色の人類114
「ふふふ、恥か。恥なのだな、貴様の行為は! しかし、その恥の行為をいつまで自分の娘に貫き通すことが出来る!? そして、いつまで女王の位置にまで据え置いた、あのアンドロイドの女を欺き通すことが出来る!? そうだ、そうなのだよ。貴様が、私と共にここにのこのこ付いて来た理由は、何もどうにもならない好奇心だけによるものでもあるまい! そう、その一生涯隠し貫き通すことの出来ぬであろう恥の部分から逃げ果せるためにここにやってきたのであろう! どうだ!? 何か返す言葉があるか?」
玉虫色の男は、ここぞとばかりに大膳を説き伏せる。
大膳は、流石にこのように胸の内に秘めていた隠し事を露わにされたせいで、
「返す言葉など何もない……。全ては貴様の言う通りだ……」
「ならば、私と手を組め。悪いようにはしない」
「む? 手を組むだと……?」
大膳は、咄嗟にうつむけていた顔を上げる。
「そうだ、私と手を組むのだ。貴様にはそれしか方法が無い」
「そ、それはどういう……?」
「決まっておろう。あの羽間正太郎という男を生け捕りにするのだ。そして、ここに並ぶ私のコレクションに加える手助けをするのだ」
「な、なんだと!?」
「そうだ。我々五次元人は、これまでの性質上、他人を欺くことにことさら長けておらん。どんなに貴様らに同化したとて、それは単なる付け焼刃に過ぎんのだよ。そこで、貴様には奴をおびき寄せる囮になって貰う。そう、どんな嘘をついてもだ」
「う、嘘を……?」
「なあ、鳴子沢大膳よ。私がここを同士たちにすら分からぬ別空間に異相しているわけを理解出来るか?」
「い、いや……。何となく理由は分からなくもないが、詳しくは説明は出来ん」
「ふふ、そうか。なら説明してやろう。私はな、五次元人として、更なる進化を遂げたいと常々思っていたのだよ。だがしかし、我々は、完全共有生命体として生きている故、全てが平均値を示す個体の連続で構成されている。そこでだ。私は、これらのコレクションした優れた人物たちを延々と研究対象としてきた。それも長い年月をかけてな」
「そ、そうか……。つまり貴様は、貴様らの仲間とも隔絶された、この別異相空間を創り、そしてその中だけで分裂を繰り返し、長い年月を生き延びてきたというわけだな?」
「そうだとも、鳴子沢大膳。私は、私自身だけが我々の中でも特別な存在になりたいと考えてここまでやって来たのだ。しかし、それには限界という物がある」
「ふむ、それは別異相空間以外での……つまり、通常空間でのことだな?」
「うむ。私は、この空間以外でも強制的に共有されぬ異相シールドを張ることに因って、それを防ぐ方法を編み出した。しかし、それをやり続けるのには、色々な意味で限界があることも分かっている」
「それは技術的な意味でなのか?」
「そうだ。それを行うには、事実上、時間的にもエネルギー的にも問題が生じてしまうということだ。だからこそ、貴様たち第六世代人類に興味を抱くようになった」
「そ、そうか! 我々人類のように、他者を欺くという概念を持つことが出来れば、それが一番手っ取り早いという寸法なのか!!」
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