虹色の人類111
「だが、我々とて、黙って貴様らの愚かなる行動を指を咥えて見ているわけにも行かなかった。なぜなら、貴様らの世界自体が、疑心暗鬼によって滅びを迎えようとしていた時代があったからな」
「む……、それはつまり、近代のキューバ危機のような事象を指して言っているのか……!?」
「ふむ、例えて言うのならそれも最大最悪の疑心暗鬼の一つだと言って良かろう。しかし、それも大なり小なり幾重にも出来事は存在する。真実はどうやら一つのみではないのだよ」
「な、なんだと……」
「そうだ。そうやって、原因も要因も一つのみに無理矢理こじつけてしまおうとするのが、貴様ら第六世代人類の悪い癖なのだ。どうやら貴様らは、そうすることによって、本能的に自分たちのアイデンティティを維持しようとする傾向がうかがえる。我々五次元人から見れば、それはとても愚かで、とても醜く、とても幼稚に感じる。しかし、にもかかわらず、貴様ら第六世代人類は未だに生き永らえ続けることが出来ている。我々……いや、私個人から見ても、それは大変興味深く、大変驚愕的な事実でしかない」
「な、何とも。それは褒められているのか、貶されているものなのか……」
「いや、そのどちらでもない。所詮、我々からすれば、貴様らなど別種の研究対象物でしかないのだからな。だがしかし、そうやって疑心暗鬼を繰り返すほどの共通認知機能に弱い貴様らがゆえに、非常に別の発展をしてきた経緯がある」
「そ、それは何だ?」
「ふむ。それは、類稀な想像力だ」
「想像力だと? しかし、貴様はさっき、我々第六世代人類は想像力に欠けると言っていたではないか?」
「それは違う。事はケースバイケースだ。他の人類が滅びを迎えるのが比較的早かった理由は、互いの認知機能が発達しすぎていたからだ。それによって、個々の想像力が削がれ、やがて思考の分岐が一つに集結されてしまった。そのお陰で、貴様らの次元に巻き起こる自然の驚異などには対処しきれなかったのだ。なのに貴様らと来たら、その分岐が幾重にも施されるために、あらゆる想定を創造することが出来る。我々と違って有性生殖の人類は、それぞれ寿命も短ければ、記憶も直接引き継がれることはない。引き継がれるとすれば、それは言語などのデータのみ。それを発展させられる背景は、貴様らの持つ個々の多様性の分岐と収縮の繰り返しによるものだと我々は分析した。確かに貴様ら第六世代人類は、概念に無い物に対しての思考の拡がりは薄い。がしかし、概念にあるもの物に対しての想像力が強い傾向がある。それが良い方向に行くのか、悪い方向に行くのかは別としての話だがな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます