虹色の人類110


「そうだ、不安定さだ」 

 目の前の五次元人を名乗る人物は言い切った。しかし、大膳には、その言葉の意味するものがまるで理解出来ない。

「なぜ? なぜ、我々人類の不安定さに興味を抱くのだ? いや、その前に……どうして我々が不安定だなどと言われなければならんのだ!」

「ふふふっ、それは良い質問だ。第六世代人類、鳴子沢大膳よ。良いか? ここに収集してあるこれまでの知的な生き物たちは、それはそれで、それぞれがそれぞれの時代を永らく栄華を極めて発展し、そして滅びを迎えている。それこそが各々の人類の足跡なのだ。だがしかし、あやつらには、貴様ら第六世代人類に無い極めて大きな共通点があった」

「共通点だと? それは何だ?」

「ふむ。それはな、どの生き物も他者を欺くことが出来なかった。つまり、嘘をつけなかったのだよ」

「な、なんだと!?」

「そうだ、そうなのだよ。貴様ら第六世代人類が信じられぬのも無理はない。だが、これは事実なのだ。貴様ら第六世代人類の特徴的な部分をあげつらうとすれば、正にそれを言及しなければならんのだ」

「分からん。全く意味が分からん。嘘を吐く行為など、大なり小なり人間なら誰でもやっている事だ。それが特徴的だなどと、全く理解に苦しむ……」

「しかし、それがそうなのだから仕方があるまい。なにせ、他の人類らは、嘘をつくまでもなく、共通して文字言語を持っておらんかったからな」

「な、なんだと!? それはつまり、文字や言葉にいちいち起こさなくとも、お互いが相手の心の奥底まで認知出来ていたと言うことなのか?」

「ふふふっ、流石は私が見込んだ第六世代人類なだけはある。とても理解が速いな。そうなのだよ。今まで滅んできた人類は、我々五次元人を見本として生成し、育成を重ねてきただけあって、全ての者同士が隠し事などせず逐一全ての物事を理解し合うことが出来たのだ。しかし、貴様ら第六世代人類とくれば、そういった機能のネジがどこかに飛んで行ってしまっていて、文字言語を持ち要らねば、意思を伝達出来ないように生まれ出てしまったようなのだ」

「な、なんと……!」

「だがしかし、その中には大なり小なり、そういった感覚の強い者もいれば、非常に弱い者も存在することも判明している。つまり、まるでゼロではないというこだな。……とは言え、どうやらその不安定さこそが、未だに貴様たち第六世代人類を存続させている理由であることに、我々は気づいた。そして多大なる興味を抱いたのだ。さらに、その不可思議な謎を突き止めるべく、貴様ら人類の本格的な調査が始まったのだ」

「そ、それが、今日に至ると言うわけなのか!?」




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